研究課題
本実験器を実現するための問題は、可視光から中間赤外線にわたる波長帯で透明な容器を開発することである。「空気箱」と名付けたこの箱を真空に引いたアクリル製の大型の実験器の中に設置し、1気圧の二酸化炭素または窒素を封入して実験を行っている。1気圧の圧力差に長時間耐えられるよう、空気箱本体はステンレス製にしてあるが、その窓材としては、可視光から中間赤外線で透明なものを使用する必要がある。これまで、FTIRなどの赤外線分光計にもしばしば利用されている岩塩を我々の実験器の窓材として実験を行ってきたが、岩塩は結露に弱く、実験の再現性を担保できないことがわかった。そこで本研究では、岩塩の代わりに窓材としてユーピロン・シートやナイロン・シートを導入することにした。これらの素材には、2μmや8μm付近に芳香族特有の強い吸収線が見られるが、シートを薄くすると、ほとんどの波長で80%以上の高い透過率を確保できることが期待された。しかし、実際に薄いユービロン・シートを装着してみると、強度的に1気圧の圧力差に十分耐えることができず、予想していた以上に変形したり、破損してしまうことがしばしばあることがわかった。そこで、本年度は、シート厚の調整等の改良を実験装置に施して、実験を再開した。しかし、実験を繰り返しているうちに空気箱が破損してしまい、実験を中断せざるを得なくなった。実験装置(空気箱の窓周辺部)の耐圧性に問題があり、これを改善する形で修理を進めているが、一連の問題を解決するためには、多少時間がかかる見込みである。上記の他、小学校~高校の理科の授業で使える地学教育(天文学・地球物理学・古生物学)に関連した教材開発にも取り組んだ。
4: 遅れている
温室効果再現のための実験器の一部である「空気箱」の窓材として薄手のユーピロン・シート及びナイロン・シートを導入し、窓の小型化を図るなどの減圧による窓材の変形をできるだけ抑えるよう工夫を重ねながら実験を行っていたが、実験を繰り返しているうちに空気箱の一部が破損してしまった。空気箱を補強する形で修理を進めているが、耐圧性の強化など、問題点が多い。これらを解決して実験を再開するまでには、暫く時間がかかる。
実験器の主な破損箇所は、空気箱の窓材を取り付けるための金具と窓材そのものである。実験を繰り返すうちに薄い窓材は変形し、やがて1気圧に耐えられず破損する。また、実験データをみると、真空に引いているにも関わらず結露した形跡が見られることもある。明確な原因はわからないが、実験に使用するガスの乾燥度が足りない可能性がある。変形した金具については最適なサイズ・形状を再検討した上で制作しなおす。また、ガスについては、これをさらに乾燥化することが可能か否か、再度検討する(冷却し、より脱水する等)。
実験装置の故障により、実験の中断を余儀なくされたため、実験に関わる経費(実験補助やデータ解析のための謝金等)を次年度に繰り越した。
すべて 2017 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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