研究課題/領域番号 |
16K12751
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
札野 順 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (90229089)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リベラルアーツ / ポジティブ教育 / ポジティブ心理学 / well-being / resilience / evidence-based |
研究実績の概要 |
「よく生きること(well-being)」に関する教育を行うポジティブ教育(positive education)の現状について、International Positive Education Networkなどで得られる情報を基に検討した。その結果、高等教育における実践例は、まだ限定的であるが、少数の好事例(Universidad Tecmilenioなど)があることを確認し、それらに関する情報を整理した。加えて、革新的なリベラルアーツ教育で知られるNew York University Abu DhabiおよびNational University of Singaporeを訪問し、カリキュラムや教育環境の視察した。さらに、大学関係者や学生とのインタビューを通して、教育の実態調査を行った。さらに、中等教育におけるポジティブ教育の実践で定評のあるGeelong Grammar Schoolを訪問し、同校におけるポジティブ教育の導入過程やカリキュラム内外の具体的な取組に関する調査を行った。 また、ポジティブ教育の推進およびその成果の測定に関する研究で知られるメルボルン大学ポジティブ心理学センターを訪問し、特に、具体的な測定手法とツールに関する情報を得た。また、同センターと研究代表者らが所属する東京工業大学リベラルアーツ研究教育院との共同研究の可能性について検討した。 これらの成果を基に、同センターのPeggy Kern氏らが開発した測定ツール(PERMA Profiler)などを使い、東京工業大学で平成28年度から始まったリベラルアーツを重視する教育が、学生のwell-beingとresilienceに与える影響の測定を試行的に行った。 平成29年3月には、同センターから研究者5名を招聘して教育測定に関する国際共同シンポジウムを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は、情報収集・整理を行う年度としていたが、メルボルン大学ポジティブ心理学センターとの協力関係を樹立することに成功し、リベラルアーツ教育のwell-beingに与える影響について試行的に測定することができた点は、当初の計画よりも大幅に進んだ。 一方、情報収集に関しては、ポジティブエデュケーションおよびその成果の測定に関する調査は順調に進んだが、リベラルアーツ教育の良好事例に関する情報収集は、New York University Abu DhabiとSingapore National University of Singaporeの現地調査だけとなった。また、これらの情報の分析も不十分である。 さらに、当初予定していたUniversidad Tecmilenio(メキシコ)の現地調査が、諸般の事情で実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、当初の予定どうり研究を推進する。平成29年度は、前年度の調査結果に基づき、学生のwell-being とresilience を高めることを基本理念として、日本型新リベラルアーツ教育の学習・教育目標を明確にする。これらの目標を、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院の教員、東北大学工学部教員、金沢工業大学の理事・教員及び国内外のリベラルアーツ教育のエキスパートに依頼してデルファイ法による調査を行い、重要性が共有されている目標群を明確化する。また、 メルボルン大学ポジティブ心理学センターのKern 博士と共同して、すでに開発され、教育機関や企業等で実装されている教育的介入手法を整理し、日本の高等教育に導入可能なものを抽出する。それらを、実際に教育現場に持ち込むことを目的に日本語化する。さらにポジティブ教育的介入手法の効果に関する実証的調査と結果の分析:研究代表者らが担当する講義において、いくつかの教育的介入が、学生のPERMA をどのように変化させるかを、日本語版PERMA Profiler を使って測定し、介入の有効性を検証する。 また、適当な時期に、Universidad Tecmilenio(メキシコ)の現地調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
連携研究者のひとりが、体調不良のため、海外調査に同行できなかったことに加え、当初予定していたメキシコのUniversidad Tecmilenioの現地調査が実施できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度内に、Universidad Tecmilenioの現地調査を実施する。
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