研究課題/領域番号 |
16K12751
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
札野 順 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (90229089)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ポジティブ教育 / リベラルアーツ / ポジティブ心理学 / well-being / resilience |
研究実績の概要 |
高等教育機関におけるポジティブ教育(Positive Education)の海外の現況について、文献調査などを行った。また、平成30年6月に開催されたInternational Positive Education Network(米国フォートワース市)に参加して、特に、高等教育におけるポジティブ教育の実践例について情報を収集した。その結果、英国のバッキンガム大学や米国のチャップマン大学などにおいてポジティブ教育が実践されはじめていることを確認した。また、イェール大学をはじめとするトップクラスの大学において、収入や権力よりも「幸福」を優先する教育が行われていることがわかった。中等教育では、ブータン王国をはじめとして、メキシコ、ペルーなどにおいて着実な成果が生まれており、well-beingの向上と学業成績とに正の相関があることが確認されている。 加えて、研究代表者が担当するゼミナール形式の科目である「Well-being(よく生きること)の科学と教育」において、参加学生らと、東京工業大学の現状を踏まえたうえで、ポジティブ教育を実践する可能性について継続的に検討を行った。さらに、平成29年度に引き続き、東京工業大学における学部学生のwell-beingとresilienceに関する調査を行い、平成28年度から実施されている新カリキュラムの影響を測定した。 研究成果の一部は、平成30年日本工学教育協会年次大会国際セッションにおいて "A New Approach in Engineering Ethics Education: Engineering Ethics 2.0 and the Science of Well-being"というタイトルで口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成30年度4月に研究代表者が所属する東京工業大学に、大学院生を対象に、専門教育に加え、世界を牽引できる能力を育成するための教育課程リーダーシップ教育院(Tokyo Tech Academy for Leadership:ToTAL)が新設された。ToTALは、「学内共通教育組織(プラットフォーム)として,大学院修士課程・博士後期課程を一貫した教育体系のもとで専攻分野や国籍・文化的背景の異なる学生同士が切磋琢磨することで,学院・系・コース(他大学における研究科・専攻)における本学の強い分野の最先端教育に加えて,文理融合分野などの異分野の一体的教育を実現し,かつ国際社会を牽引できるリーダーシップ・人間力を涵養すること」(http://www.total.titech.ac.jp/about/purpose/より引用)を目的とし、本課題とも関連が深い。研究代表者は、ToTALの立ち上げに参画し、平成30年4月に正式にToTALに移籍した。このため、具体的なカリキュラム構築などに時間を取られ、本課題に注力できなかった。また、計画していたメキシコのUniversidad Tecmilenioのキャンパス視察を、本務の都合で時間がとれず、実施することができなかった。また、東京工業大学における学生のwell-beingとresilienceの測定に予想以上に時間がかかり、日本型新リベラルアーツ教育の理念・教育目標の明確化に関する作業が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
東京工業大学における新しい試みであるリーダーシップ教育院の教育成果の質的分析を行う。また、研究代表者が担当するゼミナール形式の科目において、参加学生とともに、日本型新リベラルアーツ教育の理念・教育目標の検討を行う。また、具体的な教育手法(介入)(例えば、Good Workに関する調査報告やマインドフルネスメディテーション)を実施して、その効果を試行的に測定する。 海外の高等教育におけるポジティブ教育の現状について引き続き文献調査やインターネットを使った聞き取り調査などを継続する。加えて、2019年10月~11月頃にメキシコのUniversidad Tecmilenioを訪問し、同大学におけるポジティブ教育に関する現地調査を行うとともに、同学学長らと意見交換を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が新設された東京工業大学リーダーシップ教育院に、平成30年4月に移籍し、同教育課程の立ち上げをはじめとする業務に時間を取られ、予定していたメキシコの大学の海外調査を行うことができなかったため。 尚、次年度使用額は、2019年10月~11月に予定している上記の海外調査の旅費として使用する計画である。
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