本課題では「石灯籠に昔の大地震のことを教えてもらおう」をテーマとした地震防災教育プログラムを設計すること試みた。社寺の境内に立つ歴史的な石灯籠を用いて過去の地震の揺れの特徴を推定した報告事例がある。歴史地震で被災した多くの石灯籠を一つのグループとして扱い、その建立年代の分布、破損や修復の状況から過去の揺れを推定しようとする試みである。本研究課題では近年のこの分野の研究の進展を受けて、石灯籠群を震災遺構として扱い、大きな地震の揺れについて学ぶ地震防災の教育プログラムで利用する可能性を追求した。 先行研究によって文書情報などから得られている歴史地震の被害状況と社寺に現存する石灯籠群とを対比して歴史地震を経験した石灯籠を特定する。その石灯籠群の状況から歴史地震の被災状況を想像する教育プログラムを設計すること目指した。本計画課題の期間中に、長野善光寺における歴史地震の被害が石灯籠群から読み取れるか、近年の地震によって石灯籠群はどのような被害を受けるか、について調査し、またいくつかの新規調査サイトにおいて歴史地震を経験したと考えられる石灯籠群を特定した。北野天満宮(京都市上京区)や善光寺(長野市)など、防災教育プログラムに活用することができるサイトを確認できた一方で、理想的な条件を満たすサイトは多くないことを同時に確認した。2016年熊本地震をはじめとする最近の被害地震でも石灯籠の被害が出ていることを確認し、歴史地震と近年の地震災害とをつなぐトークンとして石灯籠を用いる可能性を検討した。これらを利用した教育プログラムの骨子の設計を行ったが、これを普及させるための方策については今後の研究課題と考えている。
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