研究課題/領域番号 |
16K12762
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
立川 明 高知大学, 教育研究部総合科学系地域協働教育学部門, 准教授 (10227100)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 科学教育 / 能動学習 / 課題探求型学習 / チーム基板型学習 / 基礎力 / 能力変化 / 議論の明確化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,科学教育における能動学習の有効性について検証することである。そのためには,アクティブラーニングを導入した科学分野の授業で成績が伸ばせること,同時に様々な能力が伸ばせることを示したい。そこでまずアクティブラーニングを導入した自然分野科目を開講した。28年度2学期に課題探求型学習による「みのまわりの科学」と,チーム基板型学習による「化学概論II」を開講した。そしてこれらの受講生に対してベネッセの「基礎力レポート」を授業期間中2回行い,変化をみた。 みのまわりの科学は,2面性のあるテーマをグループで設定し,両面から検証することで真の姿を探ろうとする授業である。課題達成の活動は主に時間外に行い,授業中は中間報告の他,様々なチームビルディングゲームやふりかえりを行った。また,化学概論IIは有機化学の教科書を毎週1章学習し,授業中に試験問題を解いたり応用課題に取り組むという授業である。時間外には各自教科書を使って予習をし,授業中には試験問題に正解するため,グループで話し合いを行う。どちらの授業もグループメンバーの話し合いや他のグループのメンバーへの説明やプレゼン,議論が頻繁に行われ,ふりかえり,フィードバック,アクションプランを立てるサイクルが盛り込まれている。 基礎力レポートの結果は,2ヶ月程度の短期間にもかかわらず多くの項目でポジティブな変化が認められた。特に議論の明確化の部分で大きな変化がみられた。今回測定を行った2科目とも,授業中に多くの議論の機会があり,物事の真の姿をとらえようとする授業の狙いと,測定された結果が良く一致する結果となたといえる。このことから今回の研究の目的の一つである,アクティブラーニングの導入で自然分野の授業における学生の能力変化が観察されたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2学期開講科目において,能動学習を取り入れた授業の実施が予定通り2科目実施できた。そのうちの1科目は課題探求型自然科目で,1科目は基礎科目の有機化学である。どちらもグループワークを中心とし,時間外学修を前提とする授業方法である。授業での学生の参加と,単位の実質化の両方を実現する授業である。 両授業において,ベネッセ基礎力レポートを10月初旬と12月中旬の2回行実施した。当初リアセックのPROGテストを利用する予定であったが,全学で1年,および3年生に対して実施していたこのテストを,ベネッセの基礎力レポートに切り替えることとなったため,本研究でも同じ調査に変更することとした。ベネ背基礎力レポートの結果から,2ヶ月という短い間に学生の自己管理力,対人基礎力,対課題基礎力を成長させる経験が多くあったと感じている様子が認められた。特に議論の明確化ー語彙力ののびが両科目とも大きく観測された。この調査結果について,大学教育学会で発表予定である。 また,有機化学の授業は,大学教員,高校教員による参観と,意見交換会を実施し,教科の授業でも能動学習を取り入れた授業で成果が上げられることについて,一つのモデルとなる授業方法を提示できた。本研究会に参加した教員からは,非常に多くの質問が出て,関心の高さを感じた。実施後の感想からも,能動学習を取り入れた授業方法について,実践的な方法を学ぶことができたなど,前向きなコメントを多くもらうことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年は,入学時に全学生に対してベネッセ基礎力レポートを実施しているため,1学期,2学期とも授業終盤で1回測定をすることにした。1学期は環境を考える(教養自然分野科目)と,チームワークを考える(教養キャリア支援科目)で測定を行う。2学期は昨年に引き続きみのまわりの科学と有機化学概論で実施予定である。ただし有機化学概論の科目区分は、理学部の改組のため,基礎科目では無く教養自然分野科目として開講することになり,受講生が何人くらい集まるか不確定で,実施できるかどうかは未定である。 本年は,ベネッセ基礎力レポートと,従来行っていたPROGテストとの比較を行うため,同授業で両方のテストを同じ時期に行う予定である。PROGテストが能力を測定するテストであるのに対して,ベネッセの基礎力レポートはアセスメントを本にした調査であるため,経験の質や量の測定に能力の変化が伴っているかは不明である。そこで,本年はベネッセのテストに加えてPROGのテストを同時に行うことを検討している。 2学期の測定結果については,本年6月の学会で発表予定である。本年度の成果についても,次年度の学会で発表を目標にまとめたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度であると言うこともあり,学会の参加で旅費の実費支出額が予算額に達しなかったため,差額が生じ残額が出た。
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次年度使用額の使用計画 |
学会発表の予定もあり,次年度は2回学会参加の予定である。
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