本研究では,主に2つの農法に注目し,専門家の協力を仰ぎながら各研究を遂行するとともに,研究期間3ヶ年の最終年度として研究成果の還元を行った。 【研究1.「菌ちゃん元気野菜づくりの教材化」農家:吉田俊道氏の農法】校庭の雑草を使った土づくりについて,研究協力者である有機農業者(吉田俊道氏)の協力を得ながら方法としてまとめた。具体的には,土壌のpHに寄らず,土壌成分を適性に保持するような処置を講じることで,夏期には3ヶ月程度,冬期には6ヶ月程度で微生物による雑草の発酵分解を進み,土づくりが完了すること,また,植物の生育を良好とする土壌中の栄養(肥効)が高まり,その土壌下で野菜を栽培した場合,慣行法を上回る栄養価(抗酸化成分など)が得られること,である。 【研究2.「水稲品種ハッピーヒルによる無肥料栽培の教材化」農家:故福岡正信氏の農法】低投入型農法に適した超多収品種であるハッピーヒルの潜在能力を発揮させるために,研究協力者である民間企業が開発した植物由来成分の活用が収量に及ぼす影響について2期(2年間)にわたり,確認したところ,穂数を増やす効果が安定的に確認され,学校現場で安定したイネ栽培技術としての利用が期待されることが明らかとなった。 これらの研究成果を紹介するために,教員ならびに農業者対象のセミナーを開催したところ,小学校,中学校技術科,高等学校(農業科)の教員,ならびに農業関係者の参加があった。このことを通し,学校種間さらには農家と教員間のネットワークが構築され,本研究で確立した技術を実際に学校現場や生産現場に還元しながら,学校での栽培活動を充実させる仕組みが確立された。
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