研究課題/領域番号 |
16K12764
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
小杉 健太郎 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (70380376)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 科学教育 / 化学教育 / 物理化学教育 / 化学実験教材 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、化学反応速度や化学平衡に関する実験教材とインタラクティブなソフトウェア群からなる化学教育プログラムを開発することである。平成28年度には、ソフトウェアの基本部分の開発と、実験教材の題材とする反応についての基礎データの質向上に必要な実験・解析方法の改善を行った。前者については、分子モデル(分子を構成する原子の座標は量子化学計算ソフトウェアGaussian09Wによる計算結果出力ファイルから直接読み込む)を三次元的に表示するソフトウェアと、分光器によって測定中の可視スペクトル(縦軸は強度、あるいは透過率)を一般の中高校生にも解りやすいように波長領域ごとに色付けして表示するソフトウェアを開発した。これらは、現段階においても大学の授業等で活用できるものであるが、本研究で今後開発するソフトウェア教材、及び、実験教材における測定ソフトウェアのベースにもなると考えている。一方、実験教材の題材とする反応についての基礎データをより正確に得るために、試料の調整方法や紫外可視分光光度計内の試料保持方法等の改善とデータ解析方法の再検討を行った。この部分については、当初の想定以上に時間を要してしまったが、実験教材の開発を行う上で避けて通れない部分であった。これによって、現時点で認識している問題点をクリアした実験方法を確立できた。次年度早々に測定実験を行い、それによって求まる反応速度定数、活性化エネルギー、平衡定数等のデータに基づいて、実験教材を開発していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究でソフトウェア教材開発を推進する上で必要と判断したため、平成28年度は三次元的な画像の表示を含むソフトウェアの開発に重点を置いて研究を行った。このため、当初予定していた反応速度・化学平衡等に関するソフトウェアの開発は達成できなかった。しかし、完成した三次元的画像表示部分は、今後のソフトウェア教材の質・教育効果を向上させる上で有用なものであると考えている。 一方で、実験教材の部分については、基礎データの信頼性を向上させるための実験方法の確立に想定以上の時間を要した。結果的には本研究開始時点に認識していた問題点だけでなく、その後に気づいた課題も解決できたものの、平成28年度後半に進める予定であった実験教材の開発は平成29年度にずれ込んでしまった。 以上を総合して、現在までの達成度を「やや遅れている」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度には、まず、改善した実験方法によって測定実験を行い、教材で題材とする反応についての基礎データを得る。その後、温度制御用のクライオスタット内の試料の色や透過光の観測方法を学習者が視認出来るような実験装置の開発を進める。ソフトウェア開発については、平成28年度までに蓄積したノウハウを活用して、反応速度・化学平衡に関するソフトウェアを完成させることに注力する。当初計画した種々のソフトウェアの開発を並行して行うより、実験教材の理論的な背景を学習させるために重要性の高いソフトウェアの作成を優先する予定である。これらの教材ソフトウェア開発の進展次第では、当初計画にはなかった量子化学計算を教材に取り入れることも検討したい。これについては、平成28年度に開発した分子モデルの三次元表示ソフトウェア(量子化学計算ソフトウェアGaussian09Wの計算結果出力ファイルの読み込みが行える)を発展させることを考えている。平成29年度後半には大学生を対象とした試行を実施して、受講生の意見を教材・教育プログラムの改善に活かしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画に沿って物品の購入と学会発表を行ったが、物品費と旅費は計画よりやや少額になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、実験教材・ソフトウェア教材の開発に必要な物品の購入に充当する。
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