本研究初年度(平成28年度)に改善した実験方法とデータ解析方法を用いて、最終年度(平成29年度)には、化学反応速度に関する実験教材の題材とする反応についての基礎データを得た。その後、コバルト錯体溶液の化学平衡の温度依存性を題材とする実験教材用の装置・ソフトウェアを開発した。実験装置はクライオスタットと小型分光器からなる。測定・解析ソフトウェアは本研究初年度に開発した小型分光器用ソフトウェアをベースにしており、透過・吸収スペクトルの表示機能と簡易的な解析機能(測定したスペクトルを2成分に分解して表示する機能)をもつ。クライオスタットのコントローラーとの通信によって、試料温度の設定や温度データの保存が行えるソフトウェアも作成した。 一方、教材の学習者の理解を深化させるためのソフトウェアも開発した。これらのソフトウェアは、電磁波の波長・振動数と光子のエネルギーの関係や化学平衡の温度依存性等に関するものであり、学習者がソフトウェア上で条件を変更することで表示されている数値・グラフ・モデルに変化がみられるインタラクティブなものである。 これらの実験教材・ソフトウェア群を用いることで、実験に不慣れな大学生や高校生であっても測定・解析を遂行でき、内容の本質をより深く理解させることができると考えている。本研究の期間内に、当初計画に含んでいた授業・講座の試行実施と学習効果の検証等を行うことは出来なかった。平成30年度中に本研究の成果を活用した授業等が実施できるように継続して取り組み、実施によって得られる知見を次期の研究に繋げたい。
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