生物界に広く見られる、食うもの(捕食者)と食われるもの(被食者)の関係や捕食回避行動を高校生や大学生に進化の視点で理解させるため、蚊の幼虫(ボウフラ)とその捕食者(ミナミメダカ)を用いた実験・観察系を確立することが本研究の目的である。この目的を達成させるため、以下のサブテーマに取り組んだ。 ①教材候補種の採集方法の確立:北海道、兵庫、長崎、沖縄の大学キャンパスや民家にトラップを仕掛け、採集されるボウフラを調べたところ、いずれの地域でもトラップLLサイズではアカイエカ種群(アカイエカ、ネッタイイエカ)、Sサイズではヤブカ類(北海道と兵庫:ヤマトヤブカ、長崎と沖縄:ヒトスジシマカ)が採集できることが分かった。これらはトラップのサイズを分けることで採集できることが判明した。 ②行動観察:アカイエカ種群とヤブカ類の行動観察を対照区とメダカがいた水(メダカ水)で比較したところ、アカイエカ種群は有意にメダカ水中で行動が抑制される一方で、ヤブカ類では行動の変化が観察されなかった。3年間の調査からヤブカ属2種およびイエカ属4種の合計6種で実験を行い、メダカ水で強く行動抑制が現れるのはイエカ属4種で不変であることが分かった。 ③高校、大学および教員免許更新講習での実験の実施:3年間で長崎市内の公立高校、長崎大学教育学部の学生(理科専攻2年生)および長崎県内で実施の教員免許更新講習でボウフラを用いた実験・観察を実施した。いずれの実験・観察においても、高校生、大学生および現職教員が実施しても、実験の再現性が確認され、受講者からの評価も高かった。また、教員にも実施することで、今後教材として普及していくことを期待したい。なお、ボウフラの採集から観察までを解説した実験マニュアルを現在作成中である。
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