研究課題/領域番号 |
16K12770
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
山田 礼子 同志社大学, 社会学部, 教授 (90288986)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 研究IR / 評価指標 / ビブリオメトリクス / オルトメトリクス / 学術文献データベース / ソシオメトリクス |
研究実績の概要 |
本研究は、高等教育機関の研究IRの評価指標の開発を提案する。IRは、Institutional Researchの略語で、機関調査と邦訳されることが多く、教育・研究・経営の効果的な推進のために、情報収集、評価指標の可視化を行って、事業の意思決定を支援する。大学の研究は、国の評価制度への対応とステークホルダーの行政機関、資金配分機関の交付や連携企業の投資の意思決定の点から、研究IRが重要な課題になっている。研究IRとして開発した評価指標を参考に、資金・要員の調達や基盤整備といった資源再配置から、成果を導くことが期待される。 これまで、研究の実績(Performance)における研究の成果(Product)として、施策の意図した結果(Outcome)、それをもたらす活動の結果(Output)、意図した結果以外の波及効果(Impact)という分類が行われてきた。プロの研究者のジャーナル評価以外に、社会各層の関係者のソーシャルメディアを介した評価も含め、研究の成果と影響度の可視化に向けた効果的な指標の開発はほとんど行われていない。本研究は、こうした新しい指標をどう開発し、研究評価として利用できるかという課題をソーシャルメディアという視点から探求することに主眼を置いた。同時に研究IRにかかわる大学のURAとURAを管轄する部署の責任者への質問紙調査を通じて、研究IRが日本でどのように位置づけられているかの分析を行うことを企図した。3回の研究会と大学URAおよび研究担当副学長等への質問紙調査を実施した2017年から2018年2月にかけて実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年の実績報告書にも書いたように、当初は、ソーシャルメディアの指標を使い、研究IRとして新たな評価指標を開発できないかということが大きな目的であった。しかしながら、実際、若手研究者を中心としたオータナティブな指標を使って研究の評価を試みたが、やはりデータが安定するとはいえないことが判明した。一環の確認作業を通して、論文の評価に用いられる指標の一つとして従来から重視されてきた被引用数に再度着目した。この日引用数を引用ネットワークを用いてのクラスタリングすることに初年度から引き続き2年目以降も注力してきた。 研究IRの実態を把握するべく、URAとURAを管轄する部門の長を対象とした研究IR調査を質問紙を通じて実施することを企図して、2017年の後半に実施した。現在、本調査の分析最中であるが、こうした調査を通じて、研究IRが大学のなかでどう位置づけられ、かつ評価指標の開発を含め、研究IRの推進にどのように大学が関与しているかの実態がある程度把握できるものと思われる。 新たな人文科学の評価指標を開発しているという情報を入手して、研究者を招聘し、STEM分野と比較して評価が難しいとされる人文科学の評価指標の開発について把握する予定であったが、当該研究者の体調により2017年度の研究会が延期になった。そのため、この招聘についての費用は2018年度に延長を申請し許可されている。
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今後の研究の推進方策 |
論文の評価に用いられる指標の一つとして被引用数がある。しかし、研究分野によって1論文に対する引用数が異なるため、被引用数は研究分野を超えて比較することが難しい。また、研究分野自体も区切りが難しく、被引用数を用いて評価するために適切な区切りは難しい。そこで、引用ネットワークを用いて、論文をクラスタリングすることで、分野を抽出し、その中での論文の役割をネットワーク構造の指標を用いて定量化した。また、クラスタ内で正規化することで、論文間のある種の比較を可能とした。今後も本方法を進化させ、安定化することに注力をする。 また、昨年招聘者の急病により、実現できなかった人文科学研究の評価指標の現在の進捗状況を把握することにより、STEM分野とは同等に評価できない人文科学の評価の在り方についても目を向けた研究を行っていく。さらに、昨年実施したURA調査分析をもとに、研究IRが大学の研究推進にどう貢献しているかについても研究を進め、評価指標のみならず研究IRの全体像への研究の手がかりとなるべく研究をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
①3月30日に国内ゲストスピーカー2人を招聘して研究会を開催予定であったが、ゲストスピーカ一人が体調不良で急遽入院をされることになり年内の仕事すべてがキャンセルとなり、年度明けてからのゲストスピーカー招聘研究会の再調整が必要となった為。4月以降に調整のうえ、8月にゲストスピーカー招聘研究会の開催が決定した。 ②URAを管轄する研究担当理事を対象とした質問紙調査を送付したが、回収期限が3月半ばとなっており、そのデータ入力・分析等が年度を超えた2018年以降になる為。
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