未利用微生物資源を開拓し有効に利用していくことは今後の人間社会発展のために必須であり、そのために各種微生物的手法に習熟した人材の拡充が求められる。現在のわが国において微生物学的手法は大学以降に習得することが通常であるが筆者はこれよりも早い段階で微生物学的手法を学び研究する場として、高等専門学校のクラブ活動を研究組織として立ち上げた。 平成30年度は前年度までに組織した微生物新種提唱を教材として用いた微生物研究組織により開発した固相電気培養装置(Solid-Phase Electrocchemical Isolation and Colonization Equipment Systems; SPECIES)を用いて、当該装置による新規微生物の分離培養に取り組んだ。当該装置から得られたコロニー菌叢を次世代シーケンサを用いて解析・比較した結果、装置内に形成された菌叢は植種源と明確に異なった。電極印加による大きな影響として、培地上に形成されるコロニーの多様性が高まることが判明した。電極印加系においては、0.5%超の検出頻度となった属が20超存在したのに対し,非印加系では11属にとどまった。また印加系から得られたコロニーには電子資化性を有さない複数株種レベルで新規と考えられる株が含まれていた。このことは当該装置により培養不能状態にあった菌体が再活性化したことを示唆した。すなわち、SPCEIESは培養可能微生物圏を拡大し得る培養技術であることが判明した。 以上の述べたように、平成30年度の活動により、(1)クラブ活動による研究組織を創出すること、及び(2)自律的に研究成果を挙げることのできる集団とすることという、本研究計画の目的が達成することに成功した。
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