研究課題/領域番号 |
16K12783
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
岸 俊行 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (10454084)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ネット会議システム / 小規模校 / へき地教育 / 人間関係構築 |
研究実績の概要 |
本研究は、地域に根差した学校を地域の中に残しながら、子ども達に多様な人間関係構築機会を提供できるようなシステムの構築を行い、その実践の思考を行うことを目的としている。へき地地域にある小規模校の大きな問題点は、人間関係が限定されてしまうことである。そこで本研究では、情報ネットワークの特徴とICTの特質を活かして、ネット会議システムを用いて、へき地にある3つの小規模校を常時接続させることで学校間交流を行うシステム構築を行うことを試行した。 1年目は、前年度までの試行期間において敷設してあったネット会議システムを用いた運用を行った。実際に運用することで従来までに分からなかった様々な問題点が多く現出した。1つにはへき地小学校の特殊性である。ICTを用いての常時接続を行うため、島地の教育委員会が管轄している学校ネットワークを用いて行わなければならない。しかし本研究の対象校となった3つの小学校も小規模校であるため、一つは小学校単独、一つは同じ敷地内に小学校と中学校がある、一つは小中学校として運営しているというようにそれぞれ異なっていた。それがこのような3校間を結ぶネットワーク構築に様々に影響を及ぼしていることが明らかとなった。ネットワークを見ても、2つの小学校は小学校ネットワークであるのに対して小中学校として運用している学校は中学校ネットワークであった。そのためファイアウオールを操作する際にも小学校・中学校どちらのネットワークの設定も変えていく必要があることが明らかとなった。本研究はへき地の小学校を結ぶネットワーク構築の試行が目的であり、研究1年目の試行において、このようなネットワーク構築における問題点が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度には主に、実践の準備として実践対象校の選定及びネット会議システムの設定・運用を行った。具体的には、下記のことを行った。 県教育委員会及び市教育委員会の協力を得て研究対象校となったへき地小規模校3校(以降「3校」と表記)にPCおよびネット会議システムの配布をおこなった。ネット会議システムはエイネット株式会社:「FreshVoice」を用いた。実際の運用に関しては、授業や学校主導による教育活動以外の活動(休み時間や課外活動等)に焦点を当てるため、学校に児童がいる間の稼働をお願いした。また、児童の自由な利活用を目的にしているため設置場所を特定の教室ではなく、学校内のパブリックな場所での設定も併せてお願いした。利用に関しては3校での毎日の利用が前提であるため、利活用に関する運用のルール策定を3校の教員と行った。8月末までの間に、各小学校に設置されているPCにネット会議システムのソフトウエアをおき、ネット会議システムのプログラム本体を福井大学教育学部のサーバーにおき、各小学校が福井大学のサーバーと接続して連携する形で実践を行える環境作りを行った。9月以降に、実際の運用を行った。運用に際しては、前期に策定した運用中のルールに則り、最初に着た教員がパブリックな場所に設定されているPCの立ち上げを行い、最後に帰宅する教員が電源を落とす形で行われた。授業に関しての利用も3校間の連絡の上で行うということで運用した。また、実際に運用して生じた問題点や利点に関して12月以降、3校の管理職及び利用教員へのインタビューも行った。1年目で得られた知見及び問題点は3月に行われた北陸三県教育工学研究会福井大会のシンポジウムで発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度より、福井県教育委員会主導ですべての小中学校にskypeを利用したネット会議システムを導入した。この導入により、相手の学校のIDを入力するだけで簡単に各学校間がつながることができる状況が福井県内において実現した。このシステムを利用することで、28年度に構築したへき地小規模校の連携ネットワークシステムを用いなくても研究対象校3校が常時つながる状況を作ることが可能になった。しかし、メインシステムは福井県教育委員会にあることによりサーバーの使用ログ等を研究使用することが難しいため、平成29年度より、へき地小学校間の授業利用に関してはこの福井県が導入したネット会議システムを主に用いて研究を進めることとし、本研究の目的である多様な人間関係構築のための常時接続環境については、昨年度導入したへき地小規模校の連携ネットワークシステムを用いるという研究体制で行っていく。しかし、学校内に二つのネットワークシステムが存在し稼働することや、福井県側のシステムが本年度より本試行になるため上手く活用できるかどうかの見通しの問題等、様々な問題が生じる可能性も想定される。そのため、各学校と密に連絡を取りながら、実践を行っていく体制を整えていく。さらに当初予定の3校のみでなく、ネット会議システムの特徴を活かして、福井県内の別の市町を対象に、当初の福井市内3校と連携した取り組みも本年度行っていく予定である。また、本年度後半には本実践の効果測定も行っていく予定である。具体的には、小規模校の子ども達に対しての対人関係に関する調査(質問紙調査およびインタビュー調査)を行い、ネット会議システムを用いる事で、対人関係の広がりをどのように認識しているのかを明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ネット会議システム敷設の際に、3校でLANケーブル等の配線工事が必要と判断して、その敷設費用を計上していたが、実際のところは1校のみの工事で済んだため、その分の差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度の研究報告書の印刷費に、昨年度分の使用額を充当する予定である。
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