本研究は、地域に根差した学校を地域の中に残しながら,子ども達に多様な人間関係構築機会を提供できるようなシステムの構築を行い,その実践の試行を行うことを目的とした。へき地地域にある小規模校の大きな問題点は,人間関係が限定されてしまうことである。そこで本研究では、情報ネットワークの特徴とICTの特質を活かして、ネット会議システムを用いて、へき地にある3つの小規模校を常時接続させることで学校間交流を行うシステム構築を行うことを試行した。平成29年度は福井県教育委員会主導で導入したskypeを利用したネット会議システムと本研究のネット会議システムの併用体制で研究を行った。本年度は研究の最終年度ということもあり本研究で敷設したシステムの評価及び今後全国に広めていく上での問題点の検証を行った。システムの評価は使用した教員及び子どもに対してのインタビュー調査によって明らかにした。インタビューは教員と数人の子どもたちに対して1対1の形で放課後や空き時間に個別に行った。本年度および本研究期間を通して明らかになったことは以下の通りである。このような複数校にまたがるある程度持続的なシステムを構築する際には、「環境構築の問題」と「運用の問題」の二つが顕在化された。それらの問題点の多くは本プロジェクトが3校での共同運用という点に起因していると考えられる。またへき地校ゆえの問題も散見された。しかし同時に多くの利点も明らかになった。特に利用した子どもたちが積極的に他校の子どもたちと関わりたい意思を示したことから、ICTを利用した取り組みでも子どもたちの人間関係構築機会の提供につながることが示唆された。従来の学校現場におけるICT利用は,授業時間に用いられることが殆どであったが、今後、授業以外の様々な児童の活動にICTを用いることの可能性が示された。
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