研究課題/領域番号 |
16K12784
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
豊浦 正広 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (80550780)
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研究分担者 |
村上 正行 京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (30351258)
茅 暁陽 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (20283195)
塙 雅典 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (90273036)
西口 敏司 大阪工業大学, 情報科学部, 准教授 (80362565)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 教育工学 / アクティブラーニング / 教授支援 / 可視化 / 映像解析 / マルチメディア処理 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでのアクティブラーニング型授業の解析の中から,1. 受講者が主体的に授業改善を目指すこと(受講者主体性)と,2. 解析結果をその場で提示すること(即時性)によって,さらなる授業改善ができる可能性を見出した.本研究課題では,アクティブラーニング型授業を対象として,授業解析結果の即時提示による受講者の主体的な授業改善を促すことを目的とする.本研究課題で提案する授業スコアボードは,映像解析結果を野球場のスコアボードのように即時可視化し,受講者の授業状況理解を可能にする.授業スコアボードの実現と有効性検証に関して,期間中に以下の3つの課題に取り組む. (1) 授業データを即時解析し,提示効果の高い要素を即時提示する (2) 過去の授業や別の授業のデータ解析結果との即時比較を実現し,(1)と合わせて提示する (3) 授業データの解析結果の即時提示が受講者に与える効果を検証する 2017年度は主に(1)および(2)についての成果を得ることができ,(3)についても着手した.深層学習も導入して授業収録映像の解析を進め,また,必ずしも一意に決まらない人間活動の状況分類に対して,その中間状態にあることも可視化できるような提示方法の検討を進めた.映像収録や映像提示のためには全周囲観測カメラやヘッドマウントディスプレイを導入して,授業映像のより詳細な収録や解析,可視化を試みた.可視化結果の提示による効果として,効率的な授業のレビューが行えることを確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度後期から始めた授業映像の収録・蓄積は2018年度も進めており,有用で貴重なデータベースとなってきている.データは3台のカメラ(1台は俯瞰用魚眼レンズカメラ,天井に設置)の映像と講師マイクおよび環境音マイクの音声,一部は腕時計型センサによる心拍・歩行速度などのデータも含む.2017年度は,映像・音声に対して深層学習と人体姿勢推定を取り入れた授業映像解析を進め,授業状況認識結果の向上が実現した. 授業状況推定と可視化する手法についてまとめ,国内研究会で発表を行った.教育学的観点から見た位置づけについて明確にするために,授業レビューに関するタスクを実験参加者に与えて,その精度とかかる時間を計測した.実験を進めるにあたっては,HTML5で実装した汎用ブラウザ上で映像・音声・可視化結果を同時に提示でき,利用者が探索できるようなシステムを準備した.可視化結果の有無によってかかる時間には有意な差があることを確かめることができたが,精度については有意な差はなかった.これは,可視化結果そのものが授業の文脈までを表現するものではなかったためであると考えている.実装した可視化システムについては,実験参加者や教育関係者からも好評が得られた. 2016年度に研究代表者が所属大学の大学教育センターにも籍を置くこととなり,授業映像と対応する学生成績や評価アンケート結果などのデータを要求しやすい立場となった.2017年度は収録授業や研究とは直接関係のない範囲でのデータ解析の業務にも当たった.個人情報の取り扱いには十分に注意を払いながら,受講者利益を目指した研究開発を進めたい.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2018年度には,以下の2つについて主に研究を進める. (2) 過去の授業や別の授業のデータ解析結果との即時比較を実現する 90分の授業の状況推移を俯瞰するような画像や,複数授業の解析結果を一覧するような画像は作成することができている.しかしながら,その意味や文脈の抽出については見る人間に委ねられている.進行中の授業と過去の同講師・別講師の授業との統計的な比較結果が可視化できるようにする.提示結果に対する受講者の反応を調査して,より効果的な提示方法を模索する. (3) 授業データの解析結果の即時提示が受講者に与える効果を検証する 授業解析結果の即時提示によって効果があるかどうかは,本研究最大のリサーチクエスチョンである.これについて,実授業または模擬授業に授業スコアボードを導入することによって確かめる.多くの環境で利用可能となるようにノート型端末と演台カメラからでも動作するポータブル授業スコアボードシステムを開発して,大学以外の教育機関での実験実施を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に成果発表のために遠方の会議参加の予定が複数回あり,旅費を確保することとした.当初計画より不足気味であった旅費に充てたい.
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