機械系学科において重要な「振動と制御の工学」の教育について,学部2年生程度の授業から卒業研究の前半部分程度までを捉えた,世界でも類のない体験的V字型教育を導入し,従来にはなかった教育効果と研究着手能力の早期付与を実現する方法論を提示するのが本研究の目的である.学年が進むにつれて模型装置などを用いた授業,数学・物理学に基づく理論教育,その後,関連するテーマの卒業研究で再び応用を意識させるように,応用と理論の間をV字を描くような教育を提供することで,この分野の社会的,学術的など多面的な重要性と本質を効果的に教え,将来幅広い実問題において高度な振動・制御設計が可能となる能力の養成を目指した. 3年度目となる平成30年度においても,11月13日(火)に,学部2年生を対象とした必修科目「振動工学第1及び演習」の授業(1コマ分,90分間)の枠組みを活用して,名古屋大学減災館を対象とした大型体験型授業(建築構造物の自由振動の観察と体験)を実施した.この授業は名古屋大学減災連携研究センターの協力を得て行われた. また,平成30年度も研究代表者の担当講義「最適制御理論」において,減災館を模した模型実験システムを導入し,減災館での体験を思い出してもらうとともに,最適レギュレータ理論に基づくアクティブ免震についてこの講義で説明し,その効果や実際の減災館との違いを学習してもらった. 平成30年度は本研究課題の最終年度にあたり,これまでの研究成果を2通のIEEE関連国際会議論文として発表した他,現在IEEE Transactions on Educationへの論文投稿を準備している.本研究の一連の成果により,平成30年度に計測自動制御学会賞教育貢献賞を研究代表者が受賞した.また,2019年4月に中国南京で開催された国際会議ICCRE2019において研究代表者が本研究に関するプレナリー講演を行った.
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