研究課題/領域番号 |
16K12791
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
安武 公一 広島大学, 社会科学研究科, 准教授 (80263664)
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研究分担者 |
中村 泰之 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (70273208)
多川 孝央 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 准教授 (70304764)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ラーニング・アナリティクス / 学習分析 / 計算社会科学 / 教育ビッグデータ |
研究実績の概要 |
研究初年度における平成28年度の目標は,現行のラーニング・アナリティクスの分析手法を超えた,新しい方法論への突破口を開くことであった.この点においてわれわれは,協調学習を行う学習コミュニティの成長と学習中の身体的リズムの関係に着目したデータ解析を行った.この手法は日立製作研究開発グループの矢野和男氏,MITのA. ペントランド教授の研究を学習科学分析に応用したものである.具体的には次の手順にしたがってデータ収集を行った.
1) 学習コミュニティ活動参加者に毎回,身体的加速度を計測するセンサを装着し,協調学習活動中の加速度を逐次収集した.2) 収集した加速度を毎回集計し,集計した学習コミュニティ活動全体の加速度データに対して時系列解析手法を応用した差分データの分布を毎回推定した.3) 同時に,ポジティブ心理学で採用されているアンケート分析も毎回実施し,学習コミュニティ活動に対する各参加者らのP/N比分析を行った.
以上の分析を,ふたつの異なる学習コミュニティ活動に対して実施した.ひとつはある学部専門のゼミ活動を対象とするもので,分析期間は平成28年度前半の半年間におよぶものである.もうひとつはある地域学習活動を対象としたものであり,その活動は二日間にわたる集中したものである(ただし後者のデータ収集は平成27年度以前に行っており今年度は解析のみを実施した).その結果,われわれは次の結果を得た.1) 学習コミュニティ活動を通した身体的リズム集計値の分布は,P/N比が顕著に高くない場合(還元すれば,学習コミュニティ全体がそれほどポジティブに成長していないとき)には,対数正規分布を示す.2) 学習コミュニティ活動がポジティブに行われ出すときには,身体的活動リズムの集計値はベキ分布であると推定することができる.これらの成果を計算社会科学の研究会等で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度はデータ解析のためのデータ収集を行うことが目的であったため,概ね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
上述したように,学習コミュニティがポジティブに成長するとき,その身体的リズムの集計値にはベキ分布としての特性を見ることができることを,われわれは異なる学習コミュニティのデータを分析することによって見出した.しかしながら,なぜそうした分布が生成されるのか,そのメカニズムについてはまだ何も分かっていない.そこで今年度は,すでに社会物理学,複雑ネットワーク科学で報告されている,ベキ分布生成のメカニズムに関する方程式によって,本研究の分析結果を説明することを試みる予定である.同時に,昨年度に引き続き,複数の協調的学習活動を対象として身体的加速度データの収集と解析を実行し,現象の普遍性・一般的妥当性を究明することを試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度末に学習分析(Learning Analytics)関連の国際会議があることに加え平成29年度4月に大規模学習データ分析に関する国際会議および同6月に計算社会科学関係の国際会議があるため,これらの旅費を捻出必要があった.
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に開催される上記の国際会議に参加する.
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