研究課題/領域番号 |
16K12794
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
山川 修 福井県立大学, 学術教養センター, 教授 (90230325)
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研究分担者 |
黒田 祐二 福井県立大学, 学術教養センター, 准教授 (10375454)
伊藤 雅之 愛知学院大学, 文学部, 教授 (60340139)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マインドフルネス / 情動知能 |
研究実績の概要 |
マインドフルネスを教育に活かすトレーニング方法として、医学分野の慢性疼痛軽減のためのMBSR(Mindfulness-Based Stress Reduction)と、ビジネス分野の能力向上のためのSIY(Search Inside Yourself)を検討し、実施したところ、MBSRでは、実施条件が厳しいため、大学生が授業や家庭で継続的に実施するには難しかった。一方、SIYは、自己認知、自己コントロール、他者との信頼関係の構築など、大学生にとっても興味を引く部分が多く、無理なく実施できた。従って、大学の授業等で実施するには、SIYベースでマインドフルネスの実習を行うことが適切と考える。 効果の検証であるが、大学の半期15回の中で、SIYベースでマインドフルネスの実習を実施し、その前後で、情動知能の向上の有無を測定したところ、統計的に有意に情動知能が向上していることが認められた。情動知能の中でも特に、自分の感情を把握する力と感情をコントロール(押さえつけるという意味ではなく)する力に向上が見られた。その意味で、マインドフルネスの実習は効果があったということができる。 また、大学だけではなく、社会人向けの公開講座で、SIYベースでマインドフルネスの実習を実施しているが、定量的な測定は実施していないが、アンケートによる定性的なフィードバックによると、実生活における変化として、感情に巻き込まれにくくなったり、対人関係が変化したりという報告も複数みられ、今後、マインドフルネスの方法論は、生涯教育の中でも取り入れていくべきものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大学の授業でどういったマインドフルネスの実習を行うかということに関しては、ある程度と特定できたと考えている。また、その効果としても、情動知能の向上という観点から、定量的に評価ができた。 また、大学教育という枠を超え、社会人向けの生涯教育においても、学生向けに特定したマインドフルネス実習の有効性を、定性的ではあるが、確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、自律的学習者の大元に「安心感」があるのではないかという仮説を立てている。 これは、神経生理学のポリヴェーガル理論でも「安心感」により、副交感神経と交感神経が自動雨滴に切り替わると指摘していることや、心理学のアタッチメント理論が説く「安全基地(secure base)」があることにより、そこを拠点に挑戦ができる、ということに関係があると考えている。今年度は、この仮説を元に、マインドフルネスを使って安心感が形成可能かどうか、また、安心感をどう測定するか、に焦点をあてて研究を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
近年、自律神経の新たな仕組みを示しているポリヴェーガル理論によると、情動知能が最大限発揮される社会的交流状態は、迷走神経の一つである腹側迷走神経が働いている状態であるが、それはその人が感じる安心かどうかという感覚に基礎を置いていることが分かってきた。本研究の目的であるマインドフルネスにより自律的学習者が育てられるかどうかに関しても、この「安心」という観点から再構成を試みる。
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