研究課題/領域番号 |
16K12795
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
市川 洋子 千葉工業大学, 創造工学部, 助教 (70406651)
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研究分担者 |
深谷 優子 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (00374877)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 日誌 / 教員志望学生 / 省察 / 熟達 |
研究実績の概要 |
教師の成長そして質の高い教育の実現のために日々の教育実践の振り返り(省察)は欠かせないものである。教員養成課程においても教育実習では多くの大学で日誌作成が義務づけられ、教員志望学生の実践に対する省察を促進しようと試みている。従来の研究では研究者による日誌分析は試みられているものの、実習生自身の省察に対する認識は十分に検討されてこなかった。しかし実習生自身の認識に関わるメカニズムが解明されなければ省察のための熟達支援を十分に行うことは不可能である。そこで本研究では実習生の日誌作成・活用方略に着目し、それらの方略の明確化と省察に対する意義認識への効果を経て主体的実践に至るまでのメカニズムの解明と介入実験を行い支援プログラム開発のための知見取得を目的とする。 平成28年度は、教育実習で日誌を利用した教員志望学生を対象にアンケート調査を行い、教師になってからも自発的に日誌利用を継続しようとする意欲を促進または妨害する要因について探索的に検討を行った。その結果、日誌利用に対する意義の理解度および日誌利用に伴う負担感が日誌継続意欲に影響することが示唆された。また日誌を用いた実践省察におけるレベルの深さと日誌継続意欲との間には有意な関連がみられず、比較的深いレベルの省察を行っていた学生であっても、日誌利用の意義が実感できず(自分の問題点に対する強いこだわりがある一方で効果的な問題解決策を得られず)、さらに日誌作成に対する負担感(言語化に対する戸惑い)を訴えていた学生は日誌継続意欲が低くかった。以上から、教員志望学生が自ら日誌を利用した省察実践を行うには、省察において日誌を用いる意義を深く認識し、日誌利用に伴う負担感を減らすことが重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は複数の調査を実施し、日誌継続意欲(教員志望学生が将来教師になってからも自発的に日誌利用を継続しようと考える程度)に焦点をあて、量的・質的分析を行った。その結果、教員志望学生の日誌継続意欲には個人差が見られること、さらに日誌継続の有無に対する理由を分類し、実践省察において日誌を利用する意義の理解の程度と日誌利用に伴う負担感が日誌継続意欲に影響していることが示された。さらに日誌にみられる省察レベルの深さと日誌継続意欲とには有意な関連がみられず、比較的省察レベルの深い学生であっても日誌利用に対する意義を十分に実感できず負担感が大きい場合には日誌継続意欲は低かった。以上の成果について国内の複数の学会で発表を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
教員志望学生の日誌継続意欲に影響する要因(実践省察に対する日誌利用の意義の理解と負担感)についてインタビュー調査も実施し、さらに分析を進め、モデルを導出する。さらにそのモデルに基づき、支援方法の開発そして予備実施と進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
アンケート調査の内容を増やしたことにより、当初予定していた以上に分析に時間を要した。そのため平成28年度に行う予定であったインタビュー調査を平成29年度に実施する形に調査計画を変更したため。
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次年度使用額の使用計画 |
インタビュー調査への協力者への謝礼、テープ起こしのための費用等に使用する。
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