研究課題/領域番号 |
16K12797
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
岸 磨貴子 明治大学, 国際日本学部, 特任准教授 (80581686)
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研究分担者 |
森田 裕介 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (20314891)
久保田 賢一 関西大学, 総合情報学部, 教授 (80268325)
時任 隼平 関西学院大学, 付置研究所, 講師 (20713134)
山本 良太 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 特任助教 (00734873)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 分身型ロボット / 特別支援学校 / 学習支援 / 学習環境デザイン / 肢体不自由 / 遠隔テレコミュニケーションロボット / 難民教育 / 高大連携 |
研究実績の概要 |
本研究では、大阪府にある特別支援学校をフィールドとして、各関係者が連携しながら特別支援を必要とする児童・生徒のコミュニケーションを支援するためにどのようにテレプレゼンスロボットOriHimeを活用したのかを明らかにした。 平成28年度4月から9月までは、OriHimeを学校に導入するための事前調査および具体的なOriHimeの活用計画の立案と導入に取りくみ、9月から3月までは、アクションリサーチを通して実践研究を行った。具体的には、研究対象校の現状を把握するために学校の事前調査を行い、対象校で取り組まれている学習活動、そこで使用されるツール、それらに対する教師の考え方について、フィールドワークと文献調査より明らかにした(時任・久保田)。次に、OriHimeを活用した学習活動を対象校の教師、開発者と検討し、活用計画を立案、実施し、活用場面の記録からその使用状況(使用者の反応、使用における困難、制約等)を明らかにした(山本・岸・久保田など)。加えて、東京都にある特別支援学校の協力を得て、テレプレゼンスロボットを介したコミュニケーション(Robot-mediated Communication)の有用性について、社会的存在感の観点から検討を行なった(森田)。 さらに、本研究では心理的および政治的・社会的側面の配慮が必要な難民の学習支援として分身型ロボットの活用の意義と学習支援について検討した.具体的にはトルコに避難しているシリア難民の生徒への学習支援としてOriHimeを活用した。内戦の経験によるトラウマや未就学期間の問題を持つ難民の児童・生徒は、特別な支援を必要としており、OriHimeの活用を通してどのような学習支援ができるかについて2つの実践研究をもとに提案した(岸)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本実践は、特別支援学校における遠隔テレコミュニケーションロボットを活用した学習支援である。当初計画していたように、大阪府の特別支援学校で活用し、その知見を学会で発表、および、論文誌に投稿することができた(投稿論文については現在、査読の審査中)。 また、本実践は、他の地域や海外へと広がり、様々な形で実践を展開することになった。そのひとつは高大連携の実践である。2016年度は、明治大学の学生と英語の授業において複数回の交流実践を行い、特別支援学校の生徒の学習意欲に影響を与え、学習支援につながったことがわかった。また、本研究知見は東京都の特別支援学級や他の地域の特別支援学校でも参考にされ、全国での実践が広がりつつある。 さらに、本研究は海外へも広げることができた。特別な支援を必要とする児童・生徒として、トルコに避難しているシリア難民を対象に、テレプレゼンスロボットを活用した学習支援を検討した。内戦でトラウマを持つ児童・生徒の学習支援としてテレプレゼンスロボッとを活用した、日本とシリア人生徒間の交流実践を行った。観察とインタビューを中心に、テレプレゼンスロボットの活用について検討し、その成果を研究会で発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、前年度の実践で明らかになった考慮点を元に、引き続き実践研究を行う。また、平成28年度に収集したデータを分析し、先行研究や理論と比較検討して考察する。特に、OriHimeの導入後から定着のプロセスを詳細に調査し、学習活動および教師や児童・生徒の変容を捉えると同時に、変容を促した要因を明らかにし、学習環境モデルを構築する。分析の視点として(1)生徒の変容(2)OriHimeを活用した学習活動の変容、(3)社会的存在感、(4)特別支援教育におけるICT活用のための学習環境デザインに関する研究知見をまとめ、発表を予定している。 (1)生徒の変容について、生徒の発話を中心にデータを収集し、会話分析を通して生徒の変容を捉える。実践者と岸が日本教育工学協議会において研究成果を発表する。 (2)OriHimeを活用した学習活動の変容について、実践者である教師のインタビューをデータとして、複線径路等至性アプローチに基づいて明らかにする。岸と山本が日本教育工学研究会にて研究成果を報告する。 (3)OriHimeを介したコミュニケーションにおける社会的存在感について、調査並びに実験データを収集する。そして、OriHimeの効果的な活用に関する知見を示す.本件については,森田らが日本教育工学会において研究成果を報告する。 (4)平成28年度及び29年度(1)~(3)の研究成果を踏まえ,特別支援教育においてICTを活用した学習活動を展開する場合、授業内外においてどのような学習環境が必要になるのかを明らかにする。研究成果は日本教育メディア学会にて報告する。
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