先の2年間の研究で、数学のレオポルト、生命科学のヒューゴのクロネッカー兄弟などの人と人の関係性様を通して、数学と生命科学をまたぐ史料を殆ど発見できず、恐らくは存在しないと結論づけざるを得なかった。レオポルトのアーカイブは事故で失われたとことが知られており、この空白をヒューゴの側から埋めるというのが当初の計画であっただけに、研究の方向の変更が必要となり、今年度は、既知の一次史料研究で発見された数学基礎論史のデータを、social graph toolで分析することに研究の目的を変更した。より具体的なターゲットとしては、主にブールからラッセルの時代までの数理論理学と数学基礎論の発展とした。これには当初の興味の中心の一つであるクロネッカーなどのベルリン学派の非論理学的基礎論観も含んでいる。最終年度に始めた方向であるため、研究は十分には進まず、文献集めが中心で、social graph 解析による新知見の発見までには至らなかった。しかしながら、この作業を通して、最近、19世紀から20世紀の文献で、従来ほとんど知られていなかった、あるいは、存在しないと思われていた文献が廉価な影印本として手に入るようになっていることが判明し、それにより新たな知見を幾つか得ることができた。その一つは、Dedekind の Was sind und was sollen die Zahlen? が、アリストテレス論理学に写像を追加したものであるという代表者の主張を、彼の Schroeder の論理学への言及から補強できるという事実、また、それにより、実は Dedekind の論理は、現代のカテゴリー論のさきがけとみなせるという知見を得た。さらにはワイエルシュトラスの基礎論が、実は集合を忌避するものであったことも判明した。文献は十分集まったので、研究計画終了後も、研究を継続する予定である。
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