研究課題/領域番号 |
16K12801
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研究機関 | 恵泉女学園大学 |
研究代表者 |
篠田 真理子 恵泉女学園大学, 人間社会学部, 准教授 (80409812)
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研究分担者 |
柿原 泰 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (60345402)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 疫学 / 公害 / 未認定患者 / 放射能 / 低線量 / 疫学史 / 科学史 |
研究実績の概要 |
1)疫学史に関する国内外の文献調査と検討を行った。それをもとに特に1970年代以降の疫学史および疫学と社会の関係について研究し、2016年12月3日(土)同志社大学寒梅館において開催された「放射線被ばくの科学史研究会」において篠田が「医学における因果関係の推論」として中間的な研究発表を行った。ここでは、海外における公衆衛生上の諸問題において疫学が果たした役割の史的展開事例について検討した。疫学における科学的確実性の理論的な展開だけでなく、確率的に示された原因論をいかに公衆衛生上の予防的措置に反映させていくかについての具体的な事例の積み重ねにより、疫学が実効的な役割を果たしていく過程について科学史及び科学社会学的に考察した。 2)具体的な事例における疫学の役割に関しては、「イタイイタイ病を語り継ぐ会」や四日市公害「市民塾」など市民運動を担ってきた方々からの聞き取りを行い、それぞれ公害問題の因果関係や原因究明における疫学の役割の歴史、関係文献、およびその今日的意義などについて情報を収集した。 公害の認定や補償が問題になり始めた6~70年代において、公害患者には重症者が多く、典型例、劇症例が多かったが、その後症状が軽減されていくにつれて、未認定患者の増加が問題化した。さらに現在においては、高齢化に伴う潜在患者の顕在化、申請の遅れによる認定の取りこぼし、さらに次世代への影響といった別の問題群が様々な公害問題において共通していることが明らかとなり、それらに対応するための理論的枠組みも変化せざるを得ないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献調査は順調に進展している。 現地調査は、すべての地点で行うことはできなかったが、イタイイタイ病や四日市大気汚染公害の関連施設については現地調査を進めた。また、それ以外の事例についても、現地調査なしでも収集できる文献や情報については調査研究を行った。
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今後の研究の推進方策 |
1)引き続き文献調査を行う。篠田は公害・環境問題における疫学文献を、柿原は放射能に関する疫学文献を調査検討するが、今後は特に海外論文や文献について収集、検討を行い国内外における疫学研究史の比較を行う予定である。 2)引き続き公害や放射能汚染に関する研究機関を調査し、資料の所在を確認するとともに内容の検討を行う。 3)疫学者重松逸造に関する資料収集及び検討を行う。 4)1年目に十分行うことができなかった疫学及び公衆衛生に関する大学の学科・講座・研究室・教室の歴史について調査研究を行う。また、研究を進める中で、大学だけでなく国立公衆衛生院(現在の国立保健医療科学院)についての研究も重要であることがわかった。そのため、この機関の歴史についても調査研究を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査のうち、予定していた数か所について2016年度中に実施することができなかった。そのため、旅費交通費の使用額が予定よりも少なくなった。 同じく、現地調査が行えなかった地点があるため、インタビューの書き起こしの必要性がなく、人件費を使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度に現地調査を実施できなかった地点については、2017年度に実施する予定であり、そこで旅費交通費を使用する。それに伴いインタビュー調査を行い、インタビューの書き起こし人件費も使用する予定である。
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