研究課題/領域番号 |
16K12803
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
野間 晴雄 関西大学, 文学部, 教授 (00131607)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | サトウキビ / プランテーション / スリナム / トリニダードトバゴ / 黒人奴隷 / インド人 / 科学技術史 / グローバルヒストリー |
研究実績の概要 |
2016年度に調査した収集資料をもとに,第60回歴史地理会大会「海を渡ったサトウキビプランテーション―ギアナからバルバドス,そしてトリンダード・トバコへ―」(愛知教育大学,2017年6月18日)を発表した。 ニューギニア起源の湿潤熱帯性のサトウキビは,紀元前500年頃までにインドで精糖技術が確立し,西南アジアからエジプト,地中海沿岸に拡大した。地中海沿岸への栽培地拡大にはアラブ人が関わる。それを間近に見たポルトガルとスペインは,15世紀に大西洋上のアゾレス諸島・マデイラ諸島(ポルトガル),カナリア諸島(スペイン)で,プランテーションの原型を確立し,ヨーロッパ向けの粗糖生産を開始する。ポルトガルは次にブラジル北東沿岸で17世紀前半にサトウキビプランテーションを開始し,オランダやイギリスも食指をのばす。この栽培・精糖技術はギアナを経て,カリブ海域を北上し,最初にイギリスがプランテーションを試みたのがバルバドスである(1627年)。イングランド生まれのプランターがアイルランド出身の白人年季奉公人を使って始めたプランテーションだがすぐに労働力が払底し,西アフリカの黒人奴隷労働力を調達して維持を図る。石灰岩性で地下水が豊富なため集落形成は容易で,全島規模での農園開発が急速に進む。ただ燃料用森林資源がすぐに枯渇し,島外からの燃料に依存した。しかし平均農地200エーカーの狭小性はすぐに生産の限界に達し,より広い農地を求めジャマイカ島や北米のサウスカロライナ州,アンチル諸島,トリニダート島に移住する農園主も多かった。 大量の単純労働力が集中して必要とするサトウキビピランテーションは,地力を消耗し,自然環境への負荷もも大きい。そのためた島嶼での開拓はすぐに飽和状態となり,別の島嶼フロンティアへ活路を求めざるを得ない。18世紀のジャマイカ,19世紀のキューバはまさにその典型である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2017年11月に国内調査で膝を痛め,歩行に障害がでてしまった。現在もその治療中である。そのため,2018年2~3月に予定していたハイチ,ドミニカの調査を中止せざる得なくなった。ただし,国内でのデータベースの収集作業,インド人研究協力者に依頼していたイギリス旧植民地のサトウキビプランテーションの資料はほぼ完了した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年実施できなかったドミニカ,ハイチの調査を今年度中に膝が回復しだい実施したいが,まだ未確定要素が多い。本来は今年度はキューバとスペイン,ポルトガルの大西洋の島嶼の調査を予定していたが,これも体調の具合で未知数である。 そのため,まず,今年度は収集した資料をもとに,中間的なレポートを学内の紀要などに2本ほど書くことを目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
膝を痛めて海外での調査がしばらくの期間難しいことが判明したため。 次年度繰越額は842,458円である。この使途については,スペイン,ポルトガル出張(12日)とハイチ,ドミニカ,キューバ,アメリカ合衆国出張(14日),国内での学会発表(東京),文献収集の旅費,報告書の製図とデーターベースの入力に充当予定である。
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