研究課題/領域番号 |
16K12804
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長瀬 敏郎 東北大学, 学術資源研究公開センター, 准教授 (10237521)
|
研究分担者 |
宮本 毅 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (90292309)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 文化財科学 / 鉱物組織 / ラマン分光 / 珪質物質 / めのう / 碧玉 |
研究実績の概要 |
この研究では,珪質材料を用いた文化財を非破壊分析法によって鉱物組織を観察し,天然の試料との比較により,その原石の産地を特定し,さらに加工技術などを推測することを目的としている。本年度では研究の最初のステップとして,分析に用いる非破壊分析法の一つとしてラマン分光法での解析手法を確立を目指し実験ならびに解析をおこなった。文化財に用いられている珪質物質のこれまでの記載を調べたところ,使用されている原石としてはメノウや碧玉,頁岩などが多い。まずは,これらの原石試料を分析し,測定時のレーザー照射による試料へのダメージを調べた。レーザー波長ならびに出力条件を変えて様々な測定条件において,レーザーを照射し,測定痕をについて光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡をもちいて検証したた。ほとんどすべての測定条件において天然試料では分析によるダメージは認められなかった。また,測定中の試料スペクトルの変化も認められなかった。そして,これらの分析により,試料中に含まれる鉱物種類の同定ならびに組織解読に必要なスペクトルを得るためのラマンスペクトルの測定条件を決定した。 研究の第二ステップとしては,文化財にもちいられた珪質物質の特定するために,様々な産地の試料についてのデータベースを確立するための基礎分析をおこなった。まずは,東北各地のメノウ産地にて産状を観察するとともに測定試料を採取した。採取した試料について薄片を作成し,内部組織を観察するとともに,その組織に対応するラマンスペクトルついて測定した。各試料の特徴ならびに産地ごとの違いを捉えることができた。現在そのデータの解析を行い,各産地ごとの特徴について解析をおこなっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試料の測定に関しては計画通りに遂行し,測定条件などを確立することができた。分析方法ならびに分析結果は計画時に予想された結果が得られており,研究は順調に進んでいる。また,野外調査での試料採集も計画通りおこない,多くの分析試料を得ることができている。また,東北大学総合学術博物館収蔵試料を活用することにより多くの試料について分析が可能となった。このことにより研究を遂行するうえで十分な分析試料を用意することができている。 各産地から得られた試料を詳細かつ多様性を検証するために扱う試料数が増加し,分析の前準備である薄片作成など実験準備に時間を費やしている。このため,電子顕微鏡による観察の進捗が少し遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究結果については予想通りの結果が得られており,今後も大きな変更なしに計画通り研究をおこなう。次年度には確立した分析法をもちいて実際に文化財資料にたいして分析をおこなう。また,データベースに必要なラマンスペクトルのデータも増やしていく予定である。本年度,遅れていた電子顕微鏡観察に関しては,また次年度に精力的に進めることにより本年度の遅れを取り戻す予定である。また,薄片作成など試料準備に時間がかかることについては実験補助をお願いすることで解決する方策をたてている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
薄片作成など分析試料の準備に時間を要してしまい,計画していた試料の電子顕微鏡観察が予定通りに行うことができなかった。そのため,今年度は電子顕微鏡観察に用いるための消耗品が予定より少なかったことによる。研究自体は試料の測定がラマン分光法を主体とし,これによる十分な成果が得られておりこれからの研究に大きな影響を及ぼすことはない。また,電子顕微鏡観察の実施の遅れを29年度には取り戻し実験をおこなうため費用も持ち越しとした。
|
次年度使用額の使用計画 |
29年度に繰り越し,電子顕微鏡観察に必要な費用として使用する。また,薄片作成に必要な実験補助費として一部使用する。
|