研究課題/領域番号 |
16K12805
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
津留 俊英 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (30306526)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 偏光計測 / テフラ / 屈折率 |
研究実績の概要 |
本研究は、火山の爆発的噴火で火山ガスとともに噴出される「粒径が数mm程度の”テフラ”に含まれる数100 μmの大きさの斑晶鉱物や火山ガラスの屈折率を、偏光解析法(エリプソメトリー)によって高精度で決定できる顕微偏光解析装置を開発する」ことを目的とする。「旧石器」が産出する地層の「層序年代」を「テフロクロノロジー」によって明らかにする時に、班晶鉱物や火山ガラスの「屈折率」を従来の浸液法に変わって光学的に直接計測する手法を確立する。 平成28年度は、微小領域の偏光解析に不可欠な偏光計測部と顕微光学部の仕様を検討した。具体的な成果は次の通りである。 1. 数100 μmの大きさのテフラ試料を顕微観察するために、現有の拡大光学系と結像レンズ、透過照明用の光源を光学ベンチ上に配置して透過型の顕微鏡を構成した。テスト試料の透過像が得られるように焦点位置調整を行った後、He-Neレーザーの光路上に反射ミラーを導入して偏光子を通過したレーザー光を拡大光学系へ導き、試料からの反射光を同様に反射ミラーでと折り返して位相子と検光子を通して2次元検出器へ入射し消光型エリプソメーターを構築した。 2. 次年度に作製する反射型対物ミラーの仕様を検討するために、作動距離20 mm前後で20倍の倍率が得られる曲率半径の市販の平凸レンズと平凹レンズを選択し対物ミラーの試作を行った。凹・凸面上にはイオンビームスパッタリング法で金の厚膜を成膜した。白色干渉顕微鏡で曲面上の金属膜の表面粗さを評価した。反射型対物ミラーの凸面ミラーは空中に浮いた配置にしなければならないため、2本の梁で支える凸面ミラーホルダーを設計し、CNCフライス装置でこれを自作した。xyz軸に加えて傾きとあおりが調整できる5軸ステージを2台用意し、これらに凹・凸面ミラーを配置し光学調整を行い、光学特性評価を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次年度に予定していた反射型対物ミラーの試作を開始するなど研究計画は前倒しで進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、反射型対物ミラーを用いた顕微光学部を製作し、偏光計測部との統合を目指す。具体的には、 1. 前年度に試作した反射型対物ミラーの結像特性と消光性能を評価し、所望の特性が得られない場合には、改めて光学設計して対物ミラーを作製する。2. 対物ミラーの入射角とジョーンズ行列決定のために、対物ミラーと同時に成膜した平面基板上の金属膜の光学定数を多入射角エリプソメトリーで計測する。なお、金属膜は、経時変化の影響が小さい金(Au)、白金(Pt)などの貴金属とし、これらの光学定数の文献値から最適な物質を選択する。計測した平面ミラーを試料として、顕微エリプソメトリー計測して偏光解析パラメーターから対物ミラーのジョーンズ行列を決定する。3. 光学定数既知の試料を用いて顕微エリプソメトリー計測し、その性能を評価する。偏光状態の計測精度が所定の値を満たさない場合には、金属反射膜無しの凹面・凸面ガラス基板を使って、対物ミラーを構成する。ガラス表面のため、反射率は低下するが、透明物質として取り扱えるため、ジョーンズ行列の決定などは容易になることが予想される。4. 凹・凸面ミラーのアライメント範囲と精度を考慮して粗微動機構を組み込んだ一体型のミラーホルダーを設計する。5. 収集したテフラから大きさが数100 μmの大きさの斑晶鉱物や火山ガラスを選別し計測試料とする。6. 平面基板上に選別した試料を光学接着剤で貼り付け後、研磨して平坦な表面を出す。基板には試料の屈折率と大きく異なり、且つ、安定供給されるSiウエハーを用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた物品を自作したため未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度請求額と合算し、計画している研究の遂行に使用する予定である。
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