研究課題/領域番号 |
16K12806
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 動植物遺存体・人骨 / 微量元素 / 産地推定 / 栽培 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、東京大学総合研究博物館放射性炭素年代測定室に微量元素分析のために設置したクリーンドラフトで、元素濃度既知の標準物質を用いて、前処理条件の検討を行った。結合融合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)と表面電離型質量分析装置(TIMS)を用いた多元素濃度測定ならびにストロンチウム同位体測定の予備的結果から、新たに設置されたクリーンドラフトを用いることで汚染の影響ほとんどない状態で微量元素濃度を正確に測定できることが確認された。より微量の測定をめざして、実験条件の検討を行った。 また、国立歴史民俗博物館くらしの植物苑で栽培された オニグルミ、アワ、ヒエ、キビなどの植物試料について、可食部の分析試料を採取した。あわせて生育環境の土壌を採取した。 現生のイネをつかった炭化実験を、温度コントロールされた電気炉中で摂氏150度から400度の温度条件で、それぞれ酸化条件を3段階(開放、アルミフォイル封入、砂中包埋)に変化させて実施した。得られた炭化米で表面計上やサイズ、重さの変化を記録した後、弘前大学北日本考古学研究センターが保有するマイクロCT装置を使用して内部構造を撮像した。また、弘前大学北日本考古学研究センターが保有する石炭顕微鏡を用いて反射率を測定し、温度条件・酸素条件による変化を調査した。内部構造では、230度以上の温度条件では発泡が観察され、加熱による炭化(チャーリング炭化)の証拠となる可能性が示された。石炭顕微鏡による反射率は、熱分解による炭化についての温度指標となることが報告されているが、チャーリングによる炭化種実の場合はほぼ同程度の値となり、炭化温度とは相関しないことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現生植物試料の採取、分析条件の検討など、ほぼ計画通りに進捗した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に得られた基礎的データを考古学的な資料に応用することを平成29年度の研究では最終的な目的とする。まず、国立歴史民俗博物館くらしの植物苑で、同条件で栽培された植物において微量元素を測定して、種間差を検討する。次に、野生で同所的に生息している植物で、上記の種間差が観察されるかを確認する。調査対象は長野県長野市を予定している。さらに、植物の炭化条件を考慮しながら考古学資料を採取して、期待される種間差が保持されているのか、検証する。あわせて、炭素・窒素同位体比を測定して、炭化条件による影響も検討する。
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