研究課題/領域番号 |
16K12808
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
橋本 裕子 京都大学, 医学研究科, 研究員 (90416412)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 骨考古学 / 乗馬姿勢 / 大腿骨骨体断面 |
研究実績の概要 |
古墳時代の大腿骨の直接観察については、本年度始めに左足のアキレス腱断裂で、入院、手術ののち、松葉杖で行動することになり、半年近く歩行が困難であったため、比較的移動に体力を要しない近隣地域の資料を中心に観察を行った。また、馬具の修正については、新しい出土資料が報告されており、それらを新たなデータとして収取した。 前年度に引き続き、乗馬経験者における筋肉痛や痣のできる部位等のデータを同じメンバーで行いデータを収集した。やはり大腿部内側に痣が集中してできること、同部位の筋肉及び大腿部背側の筋肉に疲労が起きて筋肉痛となることも前年度と同様の結果であることが確認できた。前年度の調査と本年度の調査におけるデータから、古墳時代における大腿骨背側のピラスター形状については、乗馬姿勢に伴うもの以外では考えにくいとの推測がより確固たるものとして確認できた。これらのデータについては、筋肉痛実験における被験者たちの同意を得て、イギリスの骨考古学会において成果を報告した。 前年度に研究発表した際に、鐙が金銅製品などの比較的効果と推測される場合と、木製品である場合では、古墳の規模やそのほかの副葬品にもわずかながら差異があるため、大腿骨骨体断面形状にも差異が認められる可能性について指摘を受けたため、既存のデータをもとに、差異が認められるかについても新たに調べなおした。その結果、木製品の鐙を副葬品としている被葬者の方が、顕著にピラスターの発達が認められることが高いことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度始めに左足のアキレス腱断裂で、入院、手術ののち、松葉杖で行動することになった。松葉杖使用の4か月間は調査へ出られず、ラボワークが中心となり、発表が受理されている学会を紙面発表や演題キャンセルとせざるを得なかったため、成果を公表する場が予定したよりも少なくなってしまった。また10ヶ月のリハビリがあったために、遺跡への調査や資料の実見・計測・写真撮影などのデータ収集が近隣の研究施設を中心としたものとなり、国外の調査は次年度に見送る調整をしたために、予定していたよりも作業が遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
予定していた、国内外の古人骨の実見は、予定よりも少し遅れている。ただし、予定している人骨の収蔵機関へは、既に調査の許可と、その結果についての成果公表についても許可を得ているので、速やかにデータの収集を行う予定である。 また、乗馬経験者による内転筋群やハムストリングスの筋肉痛による追加調査は順調に進められており、今後も継続のデータを収集する予定である。これらのデータについては本人の同意を得て成果の一部を公表しており、追加したデータをもとに更なる成果を報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
足の怪我により遠方への出張や学会発表が困難であった。特に手術後すぐに開催されるイギリス・ロンドンでのIoA STRESSED OUT CONFERENCEにおける研究発表は当初の予定の口頭発表から、主催大学の好意で紙面発表の形を取ったために、イギリスへの往復旅費が未使用となった。同様に韓国の釜山と羅州への出張についても先方に連絡を取り調査を次年度へ変更することになったため、韓国への旅費についても未使用となった。
予定していた調査地においては、既に調査許可があるため次年度の調査でデータを収集する予定である。また現在所属する研究室においても、怪我により出張が困難であった分の研究時間を十分とれるように配慮いただけるため十分に計画を遂行できる。特に韓国においては、国立文化財研究所と東新大学校で調査した人骨資料について、新たに調査の許可を得られたため、十分なデータ収集が可能であると考える。
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