古墳時代人骨における大腿骨骨体の断面形状について、大腿骨背側のピラスター(骨粗線)が変則的に突出する状況は乗馬姿勢によるものという仮説をもとに、研究を進めてきた。古墳時代の人骨はウマ利用と副葬品の馬具が多様化する5世紀以降の男性人骨に、本特徴が多く認められた。3世紀後半から4世紀における人骨については、数は少ないもののピラスターの突出する人骨は確認できなかった。 実験的な検証として、乗馬経験者における筋肉痛や痣のできる部位等のデータを研究期間中、同じメンバーで行いデータを収集した。その結果、大腿部内側に痣が集中してできること、同部位の筋肉及び大腿部背側の筋肉に疲労が起きて筋肉痛となることも研究機関中、同じ結果であることが確認できた。これにより、古墳時代における大腿骨背側のピラスター形状については、乗馬姿勢に伴うもの以外では考えにくいとの推測がより確固たるものとして確認できた。これらのデータについては、スウェーデンの解剖学による研究成果とも完全に一致する結果を得た。これ他の実験的な研究については、被験者たちの同意を得て、世界考古学会議、イギリスの骨考古学会、日本国内の学会などで成果を報告した。 以上から、仮説として提示していた大腿骨骨体断面の背側にあるピラスターの変則的な突出が、乗馬姿勢によるものであるということを実際の資料と共に、実験的な解剖学的データからも特定できた。 本研究期間中、2度の怪我による入院、手術に加え、体調不良による長期入院など、調査期間中に3度あり、当初予定した5世紀から7世紀代の資料については内容が国内の資料に限られてしまった。予定では韓国の資料についても調査をすることとなっていたが、韓国調査へ赴く直前に長期入院となり実現が出来なかった。
|