研究課題/領域番号 |
16K12809
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小山内 康人 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (80183771)
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研究分担者 |
足立 達朗 九州大学, 比較社会文化研究院, 助教 (00582652)
中野 伸彦 九州大学, 比較社会文化研究院, 講師 (20452790)
村上 恭通 愛媛大学, 東アジア古代鉄文化研究センター, 教授 (40239504)
槙林 啓介 愛媛大学, 東アジア古代鉄文化研究センター, 准教授 (50403621)
田尻 義了 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (50457420)
笹田 朋孝 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (90508764)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 文化財科学 / 材質分析 / 金属器 / 考古資料 / 極微量元素組成 / 同位体分析 / 鉄同位体 / 地球科学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、これまで主に金属組織に注目されて進められてきた埋蔵文化財・鉄器分析に対して、地球科学的アプローチから極微量元素分析や同位体組成分析を進めることによって、金属の新たな分析手法を確立しようとするものである。考古学における金属器分析分野の主要な研究関心は、現在、金属器自体の組織分析を通じた当時の技術レベルの復元にある。これに対し、本研究では原材料および製作工程各プロセスにおける生成物、製品に対して極微量元素分析や同位体組成分析を実施することにより、これまでの研究方法にはない原料原産地分析を試み、新たな鉄の生産と流通論につなげることを目指す。また、考古資料を分析するため、本研究では分析試料の非破壊・準非破壊での分析の方法も提案する。 研究初年度は、考古資料・金属器の鉄同位体分析に不可欠となる同位体標準試料合金の作成を実施し、生成した合金試料を用いて,レーザー溶出型マルチコレクター誘導結合プラズマ質量分析計(LA-MC-ICP-MS)により、鉄同位体の微小領域高精度分析手法を開発した。また、金属器の製作工程各プロセスにおける分析試料を入手するため,岡山県新見市において原材料や実験条件を変化させた製鉄実験を行い、精密分析用試料を採取した。初年度末には、製鉄実験で得られた実験試料を用いた、LA-MC-ICP-MSによる鉄同位体測定を開始するための準備作業が終了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、九州大学・アジア埋蔵文化財研究センターと愛媛大学・古代鉄文化研究センターが共同で行う研究であり,考古学的金属器資料に関して、地球科学的アプローチから極微量元素分析や同位体組成分析を進めることによって、金属元素組成や同位体組成の新たな分析手法を確立しようとするものである。また、由来の明らかな資料サンプルを分析し、金属生成モデルの構築を行い、複数回の実験を繰り返してモデルのブラッシュアップを図ることも目的である。 研究初年度には、金属器資料の同定・対比に有効となる鉄同位体測定のための標準試料合成に成功し、高精度微小領域の同位体分析が可能なLA-MC-ICP-MSによる測定が開始された。また、製鉄実験を通して、金属器の製作工程各プロセスにおける分析試料を採取でき、金属器原料の元素組成、同位体組成を明らかにするための基礎実験が開始された。 以上のことから、初年度の研究計画は概ね順調に進展していると見なすことができる。
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今後の研究の推進方策 |
2年目(研究最終年度)には、前年度の分析結果について詳細な検討を行い、本年度の復元製鉄実験に関する溶解・冷却温度、および溶融時間条件等の計画を協議する。この間、製鉄原材料に関する地表踏査を行う。2回目の製鉄実験では、前年度同様、製作工程各プロセスにおける分析試料を採取し、精密元素分析および微小領域同位体分析を行う。さらに、年度末にかけて、これまでの分析結果、調査結果をもとに全員でワークショップ開催して、分析手法の開発を協議する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年7月に,研究代表者が急病で入院する事態となり,原料原産地調査等の予定の研究を実施することが困難となった.しかし,2016年度末の時点で研究代表者の体調は完全な状態となり,研究遂行には何ら問題が生じない状況である.
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度の計画実施予定であった,製鉄原料の原産地調査を改めて実施するとともに,当初予定の2017年度計画を完全実施する.
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