研究課題/領域番号 |
16K12814
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
大村 順子 (兼清順子) 立命館大学, 国際平和ミュージアムオフィス, 職員 (90773987)
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研究分担者 |
田中 聡 立命館大学, 文学部, 教授 (10368011)
小川 さやか 立命館大学, 先端総合学術研究科, 准教授 (40582656)
高 誠晩 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (40755469)
川村 健一郎 立命館大学, 映像学部, 教授 (70454501)
加國 尚志 立命館大学, 文学部, 教授 (90351311)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 博物館展示学 / 平和博物館 |
研究実績の概要 |
本研究はこれまで戦争体験者の存在に支えられてきた日本の平和博物館が今後、体験者不在の中でも戦争体験を継承するための展示モデル構築を目的としている。本年度は、4回のワークショップ開催、国際会議での報告、海外調査、モデル展示制作の準備としての聞取り調査を行った。 ワークショップでは、他者の戦争体験を伝える実践者(原爆、虐殺と離散、空襲)を招聘し、彼らの実践の中での具体的な課題と解決を研究メンバーとともに検討した。代表者は第9回国際平和博物館会議で”Peace Museums After Survivors”と題してこれまでの成果で得た課題を提起し、北アイルランドの記憶を伝える取り組みとの共通性や相違点などについて参加者と議論を深めた。海外調査では英国と米国で戦争や紛争の体験継承に取り組む博物館や展示を調査し(英国帝国戦争博物館、ロンドンユダヤ博物館、ロンドン市立博物館、ブラッドフォード平和博物館、北アイルランド戦争博物館、アルスター大学Everyday Objects Transformed by the Conflict展示、米国戦艦アリゾナ記念館、戦艦ユタ記念碑、戦艦ミズーリ、パールハーバー太平洋航空博物館、潜水艦ボーフィン、ハワイ・アメリカ陸軍博物館、国立アメリカ歴史博物館、全米ホロコースト博物館、ベトナム戦争記念碑)、その成果の一部を立命館平和研究19号などに掲載した。 これらを通して、戦争体験の継承が可能となる展示が克服しなければならない課題とそれらへのアプローチの可能性を検討した。 また、次年度に行う成果展示に向けて、満州引揚げ、建物疎開、学徒勤労動員などの戦争体験者に聞取り調査を行い、映像を撮影した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
4回のワークショップを通して実践者を招聘したことで、実践事例の把握とともに、実践者と参加研究者の討議により各事例における課題とその乗り越え方が具体的に検討され、体験者→伝承者(人・モノ)→継承者(来館者)の関係の中で、体験者←伝承者の関係、特にその変容が重要性を持つことが確認された。 本年は初年に実施できなかった海外調査を行い、第二次世界大戦、ホロコースト、アイルランド紛争をはじめとする展示を視察したことで、モノと映像を用い、戦争の記憶を埋め込む展示手法の特徴と課題が明らかになった。 これらワークショップと調査と平行して、戦争体験者への聞取り調査を行い、映像の撮影を行った。その一部は第114回ミニ企画展示「熟覧3-メディア資料室への誘い-」の中で公開した。 本年はこれらの成果を得て、発信にも努めたが、立命館大学国際平和ミュージアムの秋季特別展として実施する展示実施計画の策定に遅れが出ている。このため、最終年度初めに全体会議を開催してスケジュール調整および展示実施計画の策定を急ぐ。
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今後の研究の推進方策 |
今後も継続して、ワークショップを開催し、平和博物館における戦争体験継承のための新たな展示モデル構築に向けた理論的基盤整備を行う。また本プロジェクトの最大の成果となる、新たな理論に基づいた展示実践の遂行のため、展示のコンテンツとなる戦争体験証言の収集、これらを用いた展示実施計画の策定を行い、展示を実施し、展示期間中に来館者調査を行い、モデルとしての検証を行う。また、展示をはじめとした成果の発信に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に出だしが送れ、海外調査もできなかったため、2年目に業務が延期された。2年目はこの遅れをだいぶ取り戻したが、展示の実施に関わる部分に遅れが出ており、映像編集などの作業が進んでいない。18年度は最終年度であり、秋季特別展として新たな展示モデルを公開するため、前半に作業を急ぎ、後半には展示の実施と成果のとりまとめを行う。
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備考 |
ワークショップを開催後に概要と議論の成果を立命館大学国際平和ミュージアム平和教育研究センターページ内の「平和博物館における戦争体験継承のための展示モデル構築」にて公開。(2)は正式にはRemembering the Saved City: Kyoto, the Atomic Bomb, and the Nuclear Taboo" 。第6回は、同センター「メディア資料研究会」と共同開催。
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