研究課題/領域番号 |
16K12819
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
隈元 崇 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (60285096)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地形変化プロセス / VOXEL型数値標高モデル / ノッチの地形 / 海溝型地震の規模・頻度 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では,100年・10mスケールの地形発達シミュレーター(LEMs)の開発・検証・実行と,相模トラフの巨大地震に関する変動地形の考察を目的とした.そのため,DEMでは表現できなかったノッチの地形の表現が可能な1次元VOXEL型シミュレータの新たなC言語プログラムコードの作成,海岸線後退速度の算出,相模トラフの地震について海底変動地形をproxyとした規模別頻度分布の推定を行った. 対象地域として選定した千葉県房総半島南西部に位置する見物海岸は,関東圏の地震危険度評価にも関係があるとされている.そこで,当該地域を対象に,シミュレーションで得られる地形を基に,海成段丘の形成プロセスと相模トラフの地震の規模別頻度分布を考察した.それに必要となる海岸線後退速度については,見物海岸周辺の1975年と2012年の空中写真に測量と精密な幾何補正を行い新たに算出した.その結果,見物海岸における海岸線後退速度を求めた.また,目的変数である相模トラフのプレート間地震の平均発生頻度の検証のために,相模湾内の海底地すべり地形をproxyとして規模別頻度分布から推定した. 以上のことを踏まえた結果から,現実地形と類似するのは条件として,初期地形:直線地形と波食棚の地形を組み合わせた地形,シミュレート期間:永仁地震発生年の1293年以降720年間,隆起モデル:元禄型地震のみ,海岸線後退速度R:0.05[m/yr],海底削剥速度A:Sunamura(1992)の値の0.001[m/yr]の場合となった.このことから,相模トラフにおける比較的規模の大きな元禄型地震は過去2000年間に少なくとも2回(永仁地震,元禄地震)発生したと考えることができる.これは,従来考えられていた宍倉(2001)の元禄型地震の発生間隔より短いため,関東圏の地震危険度評価の再検討が必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,研究計画書の5つの具体的作業項目である(a) UAVドローンと高所斜め撮影を組み合わせた野外測量作業,(b) VOXEL型数値標高モデルの作成手法の確立,(c) 海食崖の後退や波食に関する地形変化プロセスのパラメータの推定,(d) 非定常イベント(地すべり・斜面崩壊・洪水)の確率モデルによる導入,(e) 陸化した段丘面の侵食に関わる流路網の設定アルゴリズムの高度化の中から,(a) 野外測量作業,(b) VOXEL型数値標高モデルの作成手法の確立と,(c) 決定論的な地形変化プロセスのパラメータの推定,および(d)確率論的な地形変化プロセスのパラメータの推定について,千葉県房総半島南西部に位置する見物海岸を対象としてそれぞれ作業を行った.その結果,従来の疑似3次元のDEMを用いた地形変化の計算よりも,ノッチなどの現実の地形により即した3次元の地形変化がシミュレートできることを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
2年目と最終3年目では,初年度に開始する(a) 野外測量作業と(c) 決定論的な地形変化プロセスのパラメータの推定検討を引き続き行いながら,(d) 確率論的な地形変化プロセスのパラメータの推定手法の高度化と,新たに,地形データの高精度化に伴い避け得ない流路プロセスのモデル化について(e) 流路網の設定アルゴリズムの高度化の検討を行い,本研究の目的である1m解像度の高分解能なVOXEL型数値標高モデルを用いた100年から10万年スケールの海岸地形を対象とした地形変化シミュレータを完成させる.そのシミュレータの精度検証のために,地震性地殻変動によりノッチ・ベンチが発達する新たな対象地域の選定も行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
天候条件により,当初予定していた現地野外測量調査の実施回数が減じたため.
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度に実施できなかった現地野外測量調査については,今年度に繰り越し金額を使用して実施する.
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