本年度(研究最終年度)の研究では,種子島西岸地域の最終間氷期以降の隆起海成段丘および沖合の沈水海底段丘のシミュレーションと結果から考察を行った.この中で,初年度に開発した,従来のDEMでは表現できなかったノッチの地形の表現が可能な1次元VOXEL型シミュレータの新たなC言語プログラムコードを応用して海岸線後退速度を算出すると同時に,日向灘沖の地震の地殻変動のモデル化のために,海底活断層の確実度の検討を取り込んだ. 具体的には,陸域と海域にそれぞれ段丘が分布する種子島南西部を対象に,これらの段丘の再現を試みることでVOXEL型シミュレータの精度検証を行った.初期地形には,国土地理院の10mDEMと日本水路協会の海洋地形デジタルデータを統合して15m解像度のDEMを作成した.地形変化量の計算は,物質の移動と質量の保存を考慮して単位時間当たりの標高変化量 (a) 海水準変動,(b) 海食崖の後退侵食,(c) 浅海部の海底削剥作用,(d) 地殻変動による隆起・沈降をモデル化した.具体的には,種子島南西部に分布するM1面(Stage5e),M2面(Stage5c)の陸域の海成段丘と,水面下のST1面・ST2面(Stage3)に相当する未来の地形を考察した.このとき,海底面以深には固結した岩盤の上層として未固結な堆積物を想定し,その上置層は (b)海食崖の後退プロセスにおいて極短期間に除去されるものと考え,初期地形に含めないことで,産総研の海域地質構造データベースから固結した地層の境界面の勾配を計測して外挿した.また,海域の沈水段丘の分布と陸域の隆起段丘の分布の相補性に着目して,初期地形を2種類想定してシミュレーションを行うこと,また,プレート境界の海底活断層と反無限弾性体の食い違いモデルにより地殻変動のシミュレーションへの取り込みより,実際の地形変化が再現可能となった.
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