最終年度において大きく調査は全国的に展開した。居住支援に対する国の大きな3つの動きに対応した。ひとつはホームレス自立支援法の延長にともない、新たな立て付けとして、ホームレス・生活困窮者自立支援センターが導入されることになったこと。二つ目には、脱ホームレス支援を支えてきた生活保護を利用した中間ハウジングの運営、すなわち無料低額宿泊所を社会福祉住居施設に衣替えし、その中の良質な部分を日常生活支援住居施設として別建ての支援をつける制度の導入が決められたこと。そして三つ目に、国交省が主導する住宅セーフティネット法と連携した、居住支援法人の認定とそれをまとめる居住支援協議会の強化への取り組みが始まったことにある。 この展開については、本研究は織り込み済みで3つのテーマ編成してきた。まず居住福祉のセーフティネットの充実に関する①の調査では、ホームレス自立支援センターとセンターを持たない一時生活支援事業の支援の流れの特徴を全国的比較のもとに明らかにした。生活困窮者の定義と支援のカバリジがそれぞれに異なり、福祉事務所や生活困窮者の相談窓口との連携の違いや他の社会資源の利用の強弱といった、ローカルカラーが大変強いことが判明した。ホームレス・生活困窮者自立支援システムは、センター単体では構築し得ないという暫定的な知見を提示した。 2点目の都市内脆弱地域におけるミクロでインフォーマルなスモールビジネスの展開については、大阪市立大学都市研究プラザのブックレットにおいて、その一部を活字化した。特に中国人不動産業における新たな地域ビジネスが社会的な脆弱地域に与えた影響が地域においてまだ十分に咀嚼し得ていないことが明らかとなった。 3点目の日雇い派遣労働者の社員寮調査については、まだアウトプットはブックレットに部分的に、関東の事例について紹介したが、尼崎と西成において、現地調査を始めたところである。
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