研究課題/領域番号 |
16K12827
|
研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
水山 元 青山学院大学, 理工学部, 教授 (40252473)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ヒューマンコンピュテーション / クラウドソーシング / 予測市場 / 集合知メカニズム |
研究実績の概要 |
本課題では,消費者の潜在ニーズや選好をゲームを通じて収集し,商品のコンセプト開発につなげるための,ヒューマンコンピュテーションの仕組みを応用したシステムを新たに提案し,その評価を行うことを目的としている.提案するシステムは, (a)新商品に付与できる魅力的な属性を収集するゲーム,(b)指定した属性の組合せ(コンセプト)に対する選好を収集するゲーム,(c)コンセプトを具現化した新商品の需要を予測するゲーム,の3つから構成される.2016年度は,まず(a)については,Inversion-problemのメカニズムを応用したゲーム(ColleQ)の開発に力を入れ,基本設計からプロトタイプの実装,それを用いた被験者実験による予備的な検証まで進めた.ゲームで収集したデータの分析手法の検討の面では,対応分析の応用が有効であることを確認した.(b)については,対象商品の属性をネットワーク上のパスで表現できる場合を想定し,予測市場のメカニズムを応用してそれに対する選好を収集できるゲーム(Route Market)のプロトタイプを実装し,被験者実験で予備的な検証を行ったほか,その機能を評価するためのマルチエージェントシミュレーションモデルの開発を進めた.さらに,Output-agreementのメカニズムを応用したゲーム(Choice Sense)についても開発と検証を進めた.(c)については,予測市場を応用して需要を時系列として予測する仕組みを提案し,身近な映画を題材として取り上げた被験者実験を通じて,その検証を行った.ただし,予測市場は,映画のコンセプトが固まった段階で,それを提示した上で予測してもらうものであり,映画の開発プロセスの早い段階での予測には適していない.そこで,まだコンセプトが曖昧な状態の開発初期の段階で需要を予測するための新しいゲームメカニズムも考案し始めている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(a)については,当初Output-agreementのメカニズムを応用したゲーム(Product X)の性能評価を先行して進める予定であったが,2016年度は,Inversion-problemのメカニズムを応用したゲーム(ColleQ)の基本設計,プロトタイプの実装,予備的な検証実験の方を先に進めた.これは,本格的な性能評価には,両者の比較という面も出てくるため,ある程度開発のフェーズを揃えたほうがその後の研究が進めやすいためである.ここまでの作業量としては,ほぼ予定通りである.(b)についても,予測市場を応用したゲームだけでなく,Output-agreementのメカニズムを応用したゲーム(Choice Sense)の開発,検証も進んでおり,順調であるといえる.(c)も同じく順調に進んでいる.新しい課題も出てきたが,それに対処するためのアイディアも得られ,具現化するための作業も始めているので,ほぼ予定通りと判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
(a)については,まずOutput-agreementのメカニズムを応用したゲーム(Product X)とInversion-problemのメカニズムを応用したゲーム(ColleQ)の比較も含めた,被験者実験での検証に力を入れていく.さらに,それらのゲームの性能向上のための技術的な工夫(例えば,マッチング判定,スコア設計など)とそれを支える性能予測手法(例えば,ゲーム理論解析,シミュレーションなど)にも取り組む予定である.(b)については,予測市場ベースのゲームとOutput-agreementベースのゲームという2つの選好収集インタフェースが出来上がりつつあるので,それらで収集した選好データの応用や,コンセプト設計の支援の面に重心を移していく.具体的には,単純な部分効用モデルを基礎としたコンジョイント分析の枠組みで考える場合,複雑な効用関数を前提とした最適化問題の探索的な解法を前提とする場合などである.(c)については,予測市場に基づくアプローチはほぼ形になっているので,被験者実験等による検証を進めていけばよい.また,映画の例で出てきた課題(コンセプトが曖昧な状態の開発初期の段階で需要を予測するにはどうすればよいか)に対するアプローチを具現化して検証することも必要である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
上で述べたように,研究の効率の面から,当初予定していた被験者実験によるゲームの性能評価と,ゲームの設計,開発の順序を部分的に入れ替えて進めることにしたため,被験者実験のための実験謝金が次年度使用額となった.
|
次年度使用額の使用計画 |
翌年度にその分の被験者実験を実施することになるため,基本的には,そのための被験者謝金として使用する予定である.ただし,順調に成果が得られており,その発表のための費用が厳しくなってきているため,実験謝金が他費用で賄えた場合は,これを成果発表のために充てることも考える.
|