研究課題
平成28年度は以下の研究活動を行った。第一に、災害対応事例と訓練事例の収集を通じ、事前対応型組織の整備水準とその柔軟性に関する定性的な関係把握を行った。当初予定していた米国、日本、台湾に加え、事前対応組織作りが進んでいないベトナムの文献も収集した。また、消防関係を中心に、日本で災害対応に携わる組織への調査を実施した。第二に、北九州市における災害時医療連携体制整備(北九州市医師会医療救護計画)のための図上訓練の場を活用し、事前対応組織の整備状況とその柔軟性に関するデータ収集を行った。平成28年度の図上訓練は、12月3日に、災害医療作戦指令センターと医療チームの効果的な連携による避難所の健康管理をテーマとして実施された。この訓練は、申請者らが開発した新しい形式の図上シミュレーション訓練(情報伝達・共有型図上訓練)として行われ、実際の災害状況を模擬したさまざまな課題を当該組織に与え、意志決定と情報伝達の速度と経路を記録した。さらに、訓練会場のビデオ撮影を行い、業務が錯綜する部署でのバックアップ発生状況を調査した。上記訓練の前半は事前対応型組織としての整備水準が「一部整備」であった平成27年度と類似の内容であったため、研究代表者が保管していた平成27年度の図上訓練記録データと、整備水準が「整備(自部門把握)」に向上した平成28年度の比較を試みた。第三に、上記の活動で得られたデータをもとに、学術論文の作成を開始した。
2: おおむね順調に進展している
おおむね、計画に沿って研究活動を展開できている。特に、事前対応型組織づくりに関する文献調査では、米国における詳細な情報が得られたほか、事前対応型組織づくりの実施水準が低いベトナムについても、現地語を含む文献の整理ができた。ただし、台湾の災害対応組織に対するヒアリング調査は、台湾の政権交代の影響で災害対応のしくみに変化が生じる可能性があることから、平成29年度に実施することとした。
先述の台湾の災害対応組織に対するヒアリング調査は、平成29年度より台湾側の研究協力者と連携して実施する。調査対象組織と調査項目の選定など、ひきつづき、同調査実施のための準備を進めている。実践的なデータ取得の核である北九州市の災害時医療連携体制整備のための図上訓練については、ひきつづき、実施主体である北九州市立八幡病院、北九州市医師会と連携をとり、質の高いデータが取得できるように準備を行う。
台湾で政権交代が生じたため、中央政府や地方自治体の災害対応のしくみに変化が生じることが予想された。このため、法律や規範等の改訂がなされた後に台湾の災害対応組織に対するヒアリング調査を行うこととしたため、平成28年度に用いた資金の額が減った。
台湾の災害対応組織に対するヒアリング調査については、平成29年度に実施可能な社会状況が整うと考えられる。したがって、平成29年度に平成28年度から繰り越した資金を活用して同調査を行う予定である。
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