本研究では複雑な大型施設の避難経路で間違いやすい代表的な経路に対して直感的な迷いの少ない屋内避難誘導ピクトグラムを作成することを目標としている.実際に新国立劇場で行った1700人規模の避難訓練において避難経路を誤った通路を参考にして経路を間違えにくいようなピクトグラムを作成した.特に,2次元平面図での避難経路を模式的に表した3人称視点のピクトグラムと3次元空間状での経路を模式的に表した1人称視点のピクトグラムを作成した.また,印刷物でのピクトグラムだけではなく,将来的にはデジタルサイネージなどを利用した動画によるピクトグラムも普及してくると考え,2次元平面状での3人称視点での避難シミュレーション結果による動画像ピクトグラムと3次元での1人称視点のシミュレーション結果を用いた動画像ピクトグラムを作成した.このように静止画像と動画像,1人称視点と3人称視点の組み合わせで合計4種類のピクトグラムを作成し,どのファクタがピクトグラムの分かりやすさに効果的かを検証したところ,静止画の場合には1人称視点,動画像の場合には3人称視点が理解しやすそうなことが分かった.被験者実験の都合上,大規模なアンケート評価には至らなかったが,他プロジェクトでこのようなデザインの分かりやすさが人の移動のモデルにどのように影響を与えるかをナビゲーションの観点でモデル化する研究をしているため,今後も引き続き関連する研究を続けていきたい.
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