研究課題/領域番号 |
16K12845
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
越村 俊一 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (50360847)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 津波予報 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
大幅な演算性能向上が期待される次世代コプロセッサを活用して,自治体などコミュニティでの自立的・分散的な運用が可能なリアルタイム津波浸水・被害予測システムを構築することを目的とし,ユーザのニーズに応じて独自運用を実現するための要件を,計算モデル,計算資源量や予測内容の量と質の関係で検討した.
計算モデルについては,非線形長波式の差分法による従来のモデルに加え,近年開発が進められている新しい計算法である格子ボルツマン法を検討し,次世代の数値計算モデルとしての有効性を確認することができた.
非線形長波式の差分法による従来のモデルを採用した場合の性能評価を,複数のコンピュータアーキテクチャを用いて詳細に実施した.予測システムに組み込む次世代チップの候補として,当初から検討していたIntel製のプロセッサ(Xeon Phi)とNECのベクトルプロセッサSXの性能評価を行った.結果として,県レベルの領域(最終格子サイズ10m)を予測対象とする場合,現行のスパコンで用いられるベクトルプロセッサSXを活用した方が短時間での予測に有利であることが分かった.さらに,予報対象領域の大きさや計算に利用する地形データ(メッシュデータ)の接続方法を工夫することで,更なる高速化が可能であることも明らかになった.そこで,NECの次世代ベクトルプロセッサSX-Auroraの性能評価を新たに実施するための計画を立案し,その評価結果を得た上で最終成果報告を行うこととした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年時点で利用できるコプロセッサを活用し,津波予報システムとしての性能評価を行い,コミュニティレベルで運用が可能な津波予測システムを開発できることを実証し,その要件を明らかにすることで,当初の計画通りの成果が得られたから.一方,2018年に市場に出る新しいプロセッサを活用することでさらなる高速化が図れることが判明したため,研究期間を延長して追加検討を行うこととした.
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今後の研究の推進方策 |
次世代ベクトルプロセッサの性能評価を新たに行い,より高速な津波予測システム構築の可能性について評価する.良好な評価結果が得られた場合には,本プロセッサを組み込んだ予測システムの実機の構成を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
津波警報の迅速化を目的とした次世代プロセッサの利用について,当初Intel製のプロセッサを購入して試作機を制作して性能評価を行う予定であった.研究の進展に伴い,代表者が開発してきたプログラムが、2018年に市場に投入されたNEC製のプロセッサを利用した方が格段の実行性能向上が見込めることが判明した.そのため研究計画を見直し,追加で新しいプロセッサを利用した性能評価を行うこととした.
次年度使用額は,上記性能評価を行うためのプロセッサ購入費(物品費)および成果報告のための旅費として使用する.
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