大幅な演算性能向上が期待される次世代コプロセッサを活用して,自治体などコミュニティでの自立的・分散的な運用が可能なリアルタイム津波浸水・被害予測システムを構築することを目的とし,計算モデル,計算資源量や予測内容の量と質,および導入するハードウェアについての仕様を明らかにした.計算モデルについては,非線形長波式の差分法による従来のモデルに加え,近年開発が進められている新しい計算法である格子ボルツマン法を検討し,2011年東北地方太平洋沖地震津波の再現計算とその評価を通じて,次世代の数値計算モデルとしての有効性を実証した. 非線形長波式の差分法による従来のモデルを採用した場合の性能評価を,複数のコンピュータアーキテクチャを用いて比較し,その優劣について評価した.予測システムに組み込む 次世代チップの候補としては,Intel製のプロセッサ(Xeon Phi),NECのベクトルプロセッサSX,および最新のNEC製ベクトルプロセッサSX-Auroraとして,性能評価を行った.その結果,最新型ベクトル型プロセッサSX-Aurora TSUBASAが最も効率性が高く,ベクトル化と,計算領域の最適化,並列処理における負荷分散によって,従来法よりも大幅な性能向上が期待できることを明らかにした. 上記の検討から,本研究で提唱したリアルタイム津波浸水・被害予測方式を利用して,自立・分散型の津波予報システムを構築する場合のハードウェアとしては,最新型ベクトル型プロセッサSX-Aurora TSUBASAを配したシステムを導入することが,コスト,性能,冗長性から最も優れていることを確認することができた.
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