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2016 年度 実施状況報告書

多次元方向の変位計測に基づく斜面崩壊発生予測

研究課題

研究課題/領域番号 16K12855
研究機関高知大学

研究代表者

笹原 克夫  高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (90391622)

研究分担者 吉川 直孝  独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所, 建設安全研究グループ, 主任研究員 (60575140)
伊藤 和也  東京都市大学, 工学部, 准教授 (80371095)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード斜面崩壊 / 掘削 / 模型実験 / モニタリング / 変位
研究実績の概要

多次元方向の変位計測に基づき、斜面掘削工事中の斜面崩壊を予測する方法を検討するために実大規模の大型模型斜面を作製し、斜面下部から段階的に掘削する実験を行った。そして模型の地表面に平行な方向と垂直な方向の変位の計測を地表面上の6点で行った。
その結果斜面下部の掘削初期に、地表面方向及びそれに垂直方向の変位が増加を始めた際には、変位増加は掘削中のみに見られる。しかし掘削段階が進むにつれて、掘削終了後にもクリープ的な変位の増加が見られるようになり、最終的には掘削終了後の変位が時間と共に加速的に大きくなり、斜面全体の崩壊に至った。各段階の掘削終了後の変位は、早い段階では単位時間当たりの変位増加量が時間と共に減少するが、後の掘削段階となるに連れて、単位時間当たりの変位増加量の減少量が小さくなり、最終的には単位時間当たりの変位量が加速的に増加して崩壊に至るようになった。
実験開始から模型斜面の崩壊に至るまでの間の、地表面方向の変位とそれに垂直な変位の関係を整理してみると、大部分の計測点においては地表面方向の変位が大きく増加して崩壊に近づくに連れて、地表面に垂直方向の変位の増加量が小さくなり、崩壊直前には地表面に垂直な方向の変位は一定となった。しかし崩壊直前になっても地表面に垂直な方向の変位が一定とならない計測点もあった。これらの計測点では崩壊発生時のすべり面方向が地表面と平行でないようである。このような場合に対処するために、地表面方向の変位ベクトルとそれに垂直な方向の変位ベクトルの合成ベクトルを導入し、それと地表面のなす角度αを求めた。すべての計測点でαは変位が増加すると共に変化が小さくなり、崩壊直前にはαは一定となった。よってαはその地点がどれだけ崩壊発生に近いかを示す不安定度の指標となり得ると考えられる。
また現地斜面において傾斜計にて斜面変動の計測を実施した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初計画では実大規模の模型斜面の掘削の実験のみならず、遠心載荷試験も含めた複数の大きさと形状の模型斜面の掘削を行う予定であった。そして掘削中の地表面方向およびそれに垂直な変位を計測して、地表面方向の変位とそれに垂直な変位の関係を検討する予定であった。
しかし昨年度は大型模型斜面の実験であるが故に、模型を作る土槽や実験装置の準備に時間がかかり、1ケースしか実施できなかった。
また中規模及び小型の模型斜面を対象とする実験設備を整備したが、その製作に時間を要したため、昨年度は中型及び小型の模型実験が実施できなかった。
以上より昨年度は実大規模の大型模型斜面における掘削の実験しか実施できなかったため、研究計画に比べてやや遅れていると判断した。

今後の研究の推進方策

昨年度の実大規模の大型模型斜面の掘削と変位計測に続き、中型および小型の模型斜面の掘削と変位計測を行う。大きさのみならず形状の異なる模型斜面を作製し、掘削と変位計測を行う予定である。このような条件の異なる模型斜面における掘削中の変位の計測データを用いて、掘削に伴って徐々に不安定化する斜面の不安定度を表すための統一的な指標を検討する予定である。
また模型斜面の崩壊時に縦断方向に複数の計測点で変位計測を行い、各々の計測点における変位計測データから、すべり面と地表面の角度を求め、これを3点以上求めることによってすべり面形状を推定することを試みる。そのためには模型斜面の縦断方向にできるだけ多くの計測点を設けることが必要である。昨年度の大型模型斜面では斜面の縦断方向には2点程度しか計測点を設けることができなかったが、今年度は縦断方向にできるだけ多くの計測点を設置する事を検討する。
現地計測斜面での傾斜計の観測は引き続き実施する。

次年度使用額が生じた理由

平成28年度には当初計画していた中規模の模型斜面の掘削実験が実施できなかった。この理由は中規模の模型斜面用の土槽を準備するための、実験室の整備に時間がかかったことによる。この作業に12月までかかり、その後は実大規模の模型斜面の実験の準備に取りかかったため、中規模の模型実験の実施ができなかった。

次年度使用額の使用計画

次年度使用額は中規模及び小規模の模型実験の実施経費として使用する。具体的には計測装置や実験用の資材の購入、実験実施に関わる役務に使用する予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (9件)

  • [雑誌論文] 多数点に設置したMEMS傾斜計を用いた地すべり土塊の移動状況の詳細な計測2017

    • 著者名/発表者名
      笹原克夫,伊藤和也,吉川直孝,平岡伸隆,土佐信一,大類光平,板山達至
    • 雑誌名

      防災科学技術研究所研究資料第411号

      巻: 1 ページ: 51~60

  • [雑誌論文] 高知県北川村平鍋周辺の深層崩壊跡地と山頂緩斜面の分布2016

    • 著者名/発表者名
      笹原克夫
    • 雑誌名

      砂防学会誌

      巻: 69(3) ページ: 26-37

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 切土施工中での変位計測に基づく斜面の不安定度の評価法2016

    • 著者名/発表者名
      笹原克夫,吉川直孝,平岡伸隆,伊藤和也
    • 雑誌名

      Kansai Geo-Symposium 2016 ―地下水地盤環境・防災・計測技術に関するシンポジウム―論文集

      巻: 1 ページ: 231-236

    • 査読あり
  • [学会発表] 福囿式を用いた砂質模型斜面の崩壊発生時刻予測手法2016

    • 著者名/発表者名
      岩田直樹、笹原克夫、渡邉聡、荒木義則
    • 学会等名
      第51回地盤工学研究発表会
    • 発表場所
      岡山市
    • 年月日
      2016-09-13 – 2016-09-15
  • [学会発表] 砂質模型斜面における崩壊検知のための変位の計測精度について2016

    • 著者名/発表者名
      渡邉聡、笹原克夫、岩田直樹、中井真司
    • 学会等名
      第51回地盤工学研究発表会
    • 発表場所
      岡山市
    • 年月日
      2016-09-13 – 2016-09-15
  • [学会発表] 実大模型斜面の多段階掘削における斜面不安定度の予測に関する検討2016

    • 著者名/発表者名
      平岡伸隆、吉川直孝、伊藤和也、笹原克夫
    • 学会等名
      第55回日本地すべり学会研究発表会
    • 発表場所
      高知市
    • 年月日
      2016-08-22 – 2016-08-25
  • [学会発表] 実大規模模型斜面の多段階掘削過程における傾斜角による斜面の不安定度の分析2016

    • 著者名/発表者名
      笹原克夫、平岡伸隆、芳賀博文、土佐信一、板山達至、王林
    • 学会等名
      第55回日本地すべり学会研究発表会
    • 発表場所
      高知市
    • 年月日
      2016-08-22 – 2016-08-25
  • [学会発表] 北川村小島地すべりにおけるMEMS傾斜計の稠密観測で捉えた地表変動2016

    • 著者名/発表者名
      笹原克夫、伊藤和也、吉川直孝、平岡伸隆、大類光平、土佐信一、板山達至
    • 学会等名
      第55回日本地すべり学会研究発表会
    • 発表場所
      高知市
    • 年月日
      2016-08-22 – 2016-08-25
  • [学会発表] 北川村地すべりにおいて多点観測で捉えた斜面表層の傾斜角速度2016

    • 著者名/発表者名
      笹原克夫、伊藤和也、吉川直孝、平岡伸隆、内村太郎、王林、蘇綾
    • 学会等名
      第55回日本地すべり学会研究発表会
    • 発表場所
      高知市
    • 年月日
      2016-08-22 – 2016-08-25
  • [学会発表] 砂質模型斜面における崩壊検知のための変位の計測精度について2016

    • 著者名/発表者名
      渡邉聡、笹原克夫、岩田直樹、中井真司
    • 学会等名
      第55回日本地すべり学会研究発表会
    • 発表場所
      高知市
    • 年月日
      2016-08-22 – 2016-08-25
  • [学会発表] 福囿式を用いた斜面崩壊発生時刻の予測精度の向上2016

    • 著者名/発表者名
      岩田直樹、笹原克夫、渡邉聡、荒木義則
    • 学会等名
      第55回日本地すべり学会研究発表会
    • 発表場所
      高知市
    • 年月日
      2016-08-22 – 2016-08-25
  • [学会発表] 実大規模模型斜面の多段階掘削過程における地表面傾斜角の変動範囲の等値線図による可視化2016

    • 著者名/発表者名
      土佐信一、板山達至、芳賀博文、王林、笹原克夫、伊藤和也、平岡伸隆、吉川直孝
    • 学会等名
      第55回日本地すべり学会研究発表会
    • 発表場所
      高知市
    • 年月日
      2016-08-22 – 2016-08-23

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公開日: 2018-01-16  

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