本年度は,一昨年度と昨年度の結果の再現性を確認した上で,1)堆積域の地盤条件が単層飽和として,珪砂6号と同7号を7:3および3:7,珪砂7号と同8号を7:3および3:7の混合比で実験を実施した。その結果,変形範囲と変形深度は,ややばらつきが生じたものの,平均粒径が小さくなるほど双方の変形は大きくなることが分かった。そして,透水係数が小さいほど破壊の伝播に伴う変形範囲が拡大することが分かった(相関係数R=0.96)。この理由のひとつには,粒径と過剰間隙水圧の消散時間が関連することが考えられた。2)堆積域の地盤条件が飽和二層構造を想定し,砂利,珪砂6号,および珪砂8号を用いて,上層と下層の材料の組み合わせを変えて実験を実施した。その結果,下層に透水性の良い材料が分布する場合は,すべり面の深度が浅くなることが明らかになった。これは,土塊載荷後の過剰間隙水圧の消散時間が異なる地盤構造の差異がsqueezing-outの変形範囲に影響したためと考えられた。3)堆積域が不飽和状態であることを想定し,土層の水位を変えた実験を実施した。その結果,水位が高いほど変形範囲が拡大することを確認した。4)変形および過剰間隙水圧の詳細な挙動を把握するために最適なメトローズ溶液の濃度を検討した。この検討では,0.125%から順に濃度を上昇させた実験を展開した。その結果,今回のスケールの実験では,概ね1%の場合が詳細な水圧の挙動を捉えることが可能であることが分かった。ただし,変形に関しては,濃度の影響による発現時間に大きな差異は生じにくいことも分かった。5)北海道胆振東部地震による厚真町の斜面崩壊群を調査した結果より,複数の箇所でsqueezing-outを疑わせる現象が認められた。
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