今年度は、昨年度に引き続き、防風フェンスやネットの形状(開口の大きさ、充実率、厚さ)を様々に変化させた系統的風洞実験を対象にCFD解析を進めた。フェンス・ネットは、その影響範囲に比較して、極めて「薄い」という特徴も有するため、CFD解析上は厚みを持たない「膜」としてモデル化する多孔質ジャンプ条件を用いた。今年度は開口率の違いに着目して数値定数を様々に変化させ、その精度を検証した。風速及び乱流変動成分を詳細に比較することで、CFDモデルの現時点での有効性や課題を明らかにすることができた。すなわち、現在用いられている開口率と圧力損失係数のモデル式は、特に開口率が小さいフェンスに対して過大な圧力損失を与え、CFDによる予測結果が悪くなる傾向にあった。さらに、メッシュ分割や乱流モデルの違いが解析結果に及ぼす影響を調べ、フェンス周辺の風速分布を一定の精度で予測するためのガイドラインを整備した。 また昨年度に実施した、砂粒子、雪粒子を用いた風洞実験結果を対象に、CFDによる再現解析に着手した。CFD解析では混相流解析を採用することで、従来の積雪分布シミュレーションで用いられてきたようなone-wayのカップリングではなく、two-wayのカップリングとなり、雪粒子や砂粒子が流れ場に及ぼす影響を考慮することができる。今後の課題として、開口率による違いだけでなく、開口の形状によっても、予測精度に影響が現れるため、それらの形状の効果も考慮したモデル化が必要であることを確認した。
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