研究課題/領域番号 |
16K12859
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研究機関 | 国立研究開発法人防災科学技術研究所 |
研究代表者 |
根本 征樹 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 雪氷防災研究部門, 主任研究員 (30425516)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 吹雪 / 吹きだまり / スキャンセンサ / リアルタイムモニタリング |
研究実績の概要 |
近年頻発する、激甚化した暴風雪で発生する吹きだまりを監視し雪国の防災力を飛躍的に高めるために、吹雪時における吹きだまり量をリアルタイムで計測するとともに遠隔地からモニタリングする技術を開発する。またそれに基づく吹きだまりリアルタイム評価システムを作成し、自治体の防災担当者に公開する実証実験を通して、暴風雪対応など防災対策に資する実用的なモニタリング手段を確立する。さらに吹きだまりリアルタイムモニタリングを多点同時に実施し、吹きだまり堆積速度と地形との関連や、風速など気象要素の影響を高時間分解能で面的に評価するとともに、吹きだまりの数値モデルのパラメータ同定にも応用し、吹きだまり予測手法の高度化にも資する実測データを提供する。 二次元レーザースキャンセンサを導入し、所属機関の雪氷防災実験棟において人工降雪装置により作成した樹枝状結晶の新雪の積雪深変化、および野外における天然雪(ざらめ雪)を対象とした積雪深測定を実施し、当該センサを用いた吹きだまり形状変化の非接触・連続測定が十分可能であることを示した。降雪時における積雪深変化の連続測定も実施し、降雪片によりスパイク状の出力が生じるなど測定に及ぼす影響があるものの、平均処理を施すことで積雪深を評価できることも示した。なお出力におけるスパイク状の波形の有無により、降雪の有無が判断できるなど副次的な効果も得られた。その他、小型のレーザー距離計も導入し、屋外における吹きだまり分布の直接測定も実施した。この手法はスキャンセンサによる自動計測の検証にも資する。 吹きだまり発生および分布形状をリアルタイムで計測する機器は国内外を問わずこれまで例が無く、道路防災のための吹雪モニタリング、数値モデル検証のための観測データ収集などその応用面、波及効果は多岐にわたる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
導入した二次元レーザースキャンセンサにより、樹枝状結晶からなる新雪、およびざらめ雪など、雪質の異なる積雪層を対象として積雪深の変化を連続的に計測することが可能となるなど、本研究課題の中心となるスキャンセンサによる吹きだまりの連続測定について、十分な可能性が示された。これに基づき、吹きだまり観測システムの構築および実証実験など今後の課題に向けてのスムースな進展が可能となる。 以上より、本課題については「(2)おおむね順調に進展している」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、レーザースキャンセンサを用いた吹きだまり計測手法の検討を実施する。レーザースキャンセンサを屋外に設置し、吹雪時における吹きだまり発達過程の観測を実施し、実測データを蓄積する。またこれらの取得データをサーバーに保管し、数値地図上に表示するシステムの開発も実施する。厳冬期には複数回観測地に出向き、雪尺等を用いた吹きだまり量の実測も行ない、システム検証のための実測データを取得する。スキャンセンサによる計測データは観測対象地(北海道東部、中標津町周辺)の防災担当者に公開し、暴風雪対応について有益な情報提供が可能となるよう、データ提示手法等を検討する(試験運用)。試験運用を継続するほか、現地における暴風雪発生情報についても蓄積する。それらのデータを解析し、吹きだまりモニタリングデータから吹きだまり発生の危険性を判断するための指標を作成するとともに、それを応用して暴風雪時における吹きだまり災害危険度を評価するためのアルゴリズムを開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
冬期の野外観測地は北海道東部中標津町であり、当初、出張旅費(山形県-中標津町間)を十分に確保していた。しかし、申請者所属機関において実施している他のプロジェクト研究において、同じ北海道の道東地方(北海道標津郡中標津町)にて実施するテーマがあり、現地観測に関する出張時において、幾度か合算による旅費支出があった。それにより旅程の効率化および旅費の節約が発生したため。
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次年度使用額の使用計画 |
観測において、冬期観測における機器の設置、撤収、計2度の渡航費用(山形県-北海道)が最低限必要となり、使用計画において当初より旅費として考慮している。今後、研究内容を充実させるに当たり、観測期間中の目視観測や気象調査、機器のメンテナンスおよび試験運用に伴う現地機関との打ち合わせなども複数回実施するなど、更なる渡航費用が必要となるため、これに充当する。
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