研究期間を通して、主に四つの課題に取組んだ。 (1)三次元酸素分圧画像データより放射線照射領域を求めるプログラムを開発した。入力される画像のピクセルサイズが小動物用のマルチリーフコリメータのリーフの幅(1mm)に一致しない場合に、画像のピクセルサイズをリーフ幅に変換する計算プロセスにバイリニア法を採用し、エッジ部分で発生するアーティファクトを抑制した。(2)マウス後肢に作製する腫瘍に合わせた小動物用のマルチリーフコリメータを開発した。開口部は最大20mmであり、厚さ1mmの鉛板でマルチリーフを構成した。また、開発したマルチリーフコリメータが十分に放射線を遮蔽することを実験的に検証した。(3)腫瘍モデルマウス(C3H HeJマウス、腫瘍細胞はSCC VII)を対象とし、空間的に均一な24Gyと13Gyの単回照射後の腫瘍成長カーブを取得した。低酸素量領域に24Gy、有酸素領域に13Gyの照射を行った場合には、取得した二つのデータの間に腫瘍成長カーブが現れると予想される。腫瘍体積倍加時間は、13Gy単回照射では3日、24Gy単回照射では15日であった。(4)腫瘍モデルマウスのイメージング実験を行った。窒素14Nおよび15Nで標識したdicarboxy-PROXYL酸素感受性プローブをマウスへ尾静脈投与し、酸素分圧イメージングを試みた。腫瘍内部での血流不足のためプローブが腫瘍の中心部へ十分送達されず、電子常磁性共鳴(EPR)イメージングの信号強度が十分に得られなかった。EPR信号強度とプローブの緩和時間の画像は得られているが、酸素分圧画像へ変換するためには信号対雑音比が不足していることが明らかとなった。 全体としては、強度変調放射線治療モデル実験に必要な要素技術を開発し、モデル実験の手前まで到達した。
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