現在、日本に約32万人が血液透析治療を受けており、年々増加傾向にある。現在の透析治療は患者にとって物理的、肉体的及び精神的な問題が大きいという問題点がある。本研究の最終目標は、慢性腎不全患者を維持透析治療から解放するために体内埋込型人工腎臓を実現することである。現在行われている人工透析は透析膜を使用しているため、膜の劣化により年単位の持続透析はできず、体内埋込は難しい。そこで、新しい方法として、遠心分離による方法を考案した。連続血液分離装置によって分離された血清成分を用いて尿成分を生成し、膀胱から排出することで透析離脱を試みる。 連続して血清成分を得ることができるようにディスク型遠心分離を採用した。ディスクを高速回転させて、血球成分やタンパク質を分離させることで、尿の元となる血清成分を生成する。しかし、G(加速度)が高いと凝固系が活性化して血栓の発生が危惧される。そこで、二段階遠心分離を採用し、一次分離では低Gで血球やフィブリノーゲンを分離し、凝固、溶血の恐れがない二次分離では高Gかつ長時間の遠心分離によってタンパク質を分離する。 本年度は一次側の血液用分離器を作製し、豚血液を用いて分離実験を行った。輸液ポンプを用いてインレット500ml/h血液アウトレット450ml/h血漿アウトレット50ml/hと設定し、モーター回転数1000rpmの条件で分離実験を行い、連続で50ml/hの血漿を得ることに成功した。
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