本研究では、透析膜に変わる新しい方法として、持続遠心分離による方法を提案する。本研究は、小型持続遠心分離装置を試作して、体内埋込式遠心型人工腎臓の実現可能性を検討することを目的とした。 体内埋込式遠心分離型人工腎臓は、本体を体内に埋め込み、動脈、静脈および膀胱に接続される。動脈から流入してきた血液を持続遠心分離し、血球成分やタンパク成分などの生体に必要な物質は腎静脈から体内へ戻し、余剰水分や老廃物などは膀胱へ貯め、排出する。 遠心分離で血液を分離する場合、加速度(G)が高いと凝固系が活性化してしまい、血栓の発生が危惧される。また、高シアストレスによる溶血の発生も危惧される。そこで、二段階遠心分離を採用し、一次分離では比較的低いGの遠心分離で血球成分を分離し、血栓や溶血の恐れがない二次分離では高いGかつ長時間の遠心分離によってタンパク成分を分離する。 遠心分離器製作にあたり数値流体解析を行い、問題となる部分の設計を変更した後、分離器を試作し、酵母菌分離実験やディスク形状最適化実験、ガラスビーズ分離実験、血液分離実験などを行い、分離性能の検討と問題解決のための設計変更として、ディスク形状、ポートの位置、ベアリングレス設計など改良を加えた。 血球分離実験の結果は分離効率がまだ十分でないことや、既存の血液ポンプに比べると溶血量も多いことなど、改善の余地がまだ残るが、血球分離の目的は達成した。タンパク分離実験を行った結果、完全分離には至らなかったが、直径80 mmの小型遠心分離器でもTPを低下させることができた。
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