研究課題
人の歯では緩慢な変化が起こっており、加齢に伴い石灰化が亢進する一方、象牙質コラーゲン線維においては糖化反応が起こり、Advanced Glycation End-products(AGEs)と総称される糖化物質の沈着が進むことで、歯の変色や物性の変化に与える影響を与えることが分かってきた。糖化反応は加齢変化の一つとして考えられ、一連の反応はメイラード反応とよばれ、酵素が関与せずに不可逆的に反応が進行する。象牙質は糖化ストレスに常に受ける環境にあり、ほとんど代謝しないため老化物質が蓄積しやすい環境と考えられる。最近では、血液中のヘモグロビンや血管、歯を構成する象牙質やその歯における疾患である齲蝕の中にもAGEsが蓄積することが分かり、蓄積した蛍光性AGEsに対して光学的な手法を応用することで様々な疾患の診断や治療への応用も視野に入れて研究を進めている。本研究では超微形態学的手法、免疫組織学的手法、western blot法などの生化学的手法、さらに象牙質コラーゲンの蛍光寿命測定などの光学的手法を用いて分析を行った。 コラーゲン基質におけるAGEsの中には自己蛍光を持っているものもあり、本研究においてコラーゲン線維の自己蛍光に比べて蛍光の減衰時間である蛍光寿命が短いという結果が出た。その違いを光学的に測定し利用することで従来の蛍光量を指標とした蛍光強度ではなく蛍光の質をみた蛍光寿命による感度の高い測定を行うことが可能となった。クロマトグラフィーやNMRのデータから蛍光性架橋の原因物質はペントシジンであると考えられる。これらの物質は、生体内の様々な期間において蓄積することから、ヘモグロビンの蛍光寿命の減衰や血管の力学的強度の低下や、象牙質の齲蝕進行特性の変化にも相関しており、今後様々な臨床領域への応用が可能であると考えている。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
J Prosthodont Res.
巻: 62 ページ: 177-183
10.1016/j.jpor.2017.08.006.
Dental Material Journal
巻: 36 ページ: 842-850
10.4012/dmj.2017-105.
Clin Oral Investig.
巻: 21 ページ: 309-317
10.1007/s00784-016-1792-5.