①増殖因子固定化ハイドロゲルの作製:増殖因子固定化可能なハイドロゲルとして、コラーゲンに対して増殖因子固定化能を有するヘパリンを導入したヘパリン導入コラーゲンゲルを作製した。ハイドロゲルの増殖因子固定化能として、bFGFを用いて固定化能を評価するとともに、独自手法による血管化肝組織構築法への応用を行った。その結果、コラーゲンに対して高い増殖因子固定化能を有すること、また、血管化肝組織の生存率が向上することを見出した。以上の結果、細胞培養、組織形成誘導に有用な増殖因子固定化ハイドロゲルの調製条件を確立した。 ②架橋密度を変化させたハイドロゲル上でのヒトiPS細胞の培養と機能評価:種々の架橋剤濃度によって架橋密度を変化させたコラーゲンゲルを用いたヒトiPS細胞の機能評価を行った。まず、ハイドロゲルの弾性率の測定を行った結果、架橋剤濃度の増加に伴い、弾性率が増加することが示され、架橋密度によるゲル力学的強度の制御が可能であることが示された。次にハイドロゲル上でのヒトiPS細胞の培養を行い、三胚葉の代表的なマーカーに対し、遺伝子発現解析を行った。この結果、架橋を行ったハイドロゲル上でのiPS細胞の遺伝子発現レベルは、対照群と比較して抑制される傾向が示された。この結果は柔らかい表面上において、iPS細胞の分化誘導がより促進されている可能性を示唆していると考えられた。一方、架橋密度の違いは遺伝子発現レベルに明確な影響を与えなかった。この結果は今回作製したゲル濃度が低く、架橋密度の影響が小さかったためであると考えられる。本研究では定性的な評価にとどまったが、今後、ゲル濃度や架橋方法等の最適化を行うことにより、力学的強度が三胚葉への分化傾向に与える影響を解析する手段につながることが期待される。
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