研究課題/領域番号 |
16K12884
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
山越 健弘 福岡工業大学, 情報工学部, 准教授 (70444205)
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研究分担者 |
李 知炯 福岡工業大学, 情報工学部, 助教 (10735583)
松村 健太 北海道大学, 情報科学研究科, 学術研究員 (30510383)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生体光計測 / 血中アルコール濃度 / 光電容積脈波 / 多波長同時計測 / 飲酒運転撲滅 |
研究実績の概要 |
科学技術は人間生活の“豊かさ,利便性”の追求のもとで,凄まじい勢いで発展してきた。移動手段としての「車」も,その生活利便性の故に車社会は益々拡大している。その一方で飲酒運転を含む交通事故は後を絶たず,依然として大きな社会問題となっている。申請者らはこれまで近赤外光を用いた非観血的(非侵襲)血液成分計測のための革新的・独創的な方法論を提案し,その基礎的成果を国内外の学会,学術論文誌等に公表し,高い国際的評価を得てきた。本研究では“飲酒運転撲滅“を目指す「飲んだら乗れない」システム開発を目標に,光学的アルコール濃度計測法(パルス・アルコメトリと称する)の実用開発のための礎を確立する。 平成28年度においては「アルコール吸光波長帯域における高精度・高感度生体光計測システムの構築」を行った。具体的にはアルコール固有の吸収波長805 nm(吸収度小),1185 nm(吸収度中), 及び1690 nm(吸収度大)の3波長においてアルコールの吸収が中程度である1185 nm,そして最も水の吸収の高く,最もアルコールの吸収が高い1690 nmについて重点的に検討を行った。まず,1185 nmと1690 nmのLEDと,当該波長±7 nm程度の半値幅の光干渉フィルターを用いた光計測システムを構築(試作)し,健常成人男性10名の被験者で計測実験を行った。その結果,LEDにて世界で初の1690 nmの光電容積脈波を検出することに成功した。この波長で光電容積脈波が計測できたことの意義はとても高く,光を用いた血中アルコール濃度計測の可能性の光が見えた成果であった。次なる課題は如何にS/N良く光電容積脈波を検出することであり,H29年度はその実験検討を行い,可能であれば飲酒負荷をさせて光電容積脈波に変化が起こるのかを予備検討する予定である。本年度は「飲んだら乗れない」システム開発を最終目標とした非侵襲光学的アルコール濃度計測の実用開発のための第一歩を踏み込んだと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように,アルコール固有の吸収波長の中でも最も吸収が高い(更に水の吸収も高い)1690 nmのLEDで光電容積脈波を検出できたことは革新的であり,本研究を推進・実現させる大きな成果であった。また,905 nm,1185 nm,及び1690 nmとの同時計測も可能な装置が構築できており,今後の進展にも期待が出来る。当初は1690 nmで光電容積脈波が検出できないと想定しており,確実に光電容積脈波が測定可能(生体の窓と呼ばれる)な905 nmと1185 nmを使う予定であったが,その吸収度は1690 nmに対してそれぞれ,1/100,1/10であり,アルコール検出には困難な波長であるため一旦保留としたが,装置上計測は可能な機構にしてあるため,今後はそれらの波長も加えて検討していくことも考えている。総じて当初の計画以上に進展しているが,光電容積脈波のS/N比向上の課題が未解決である。その為,H29年度は当初掲げた計画が先送りになる可能性もあるが,確実に血中アルコール濃度が予測できるように焦らず,じっくり研究を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
まずは3Dプリンターを利用し,指固定治具の改良を行う。次に光電容積脈波に乗るノイズ低減策を考え,それを実験検証する。ノイズ発生源には色々な要素があり,例えば体動(モーションアーチファクト)ノイズ,電気電子回路由来のノイズ,熱雑音,電磁波由来のノイズなどが考えられ,それらの中から重要性の高いものを抽出し,S/N比向上に向けた検討い,本実験(健常成人男性12名を予定)行う。また,時間的余裕があれば,数名の飲酒負荷試験を行い,血中アルコール濃度が予測可能かの予備検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に旅費,人件費・謝金が発生しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は人を利用した本実験を行う予定なので,それに関する被験者への謝金,データ整理に関する謝金,採血を伴う実験では看護師を雇う人件費に充てる予定である。また,光電容積脈波計測装置の改良のための物品費(外注する場合はその費用),学会発表旅費にも充てる予定である。
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