研究実績の概要 |
患者由来の人工多能性幹細胞(iPS細胞)から成熟細胞へ分化させて病態をモデル化し、治療法開発・創薬とつなげる研究が注目されている。しかし、この病態再現ヒト細胞の様々な注目分子動態を、定量的に評価する方法はまだ確立していない。そこで、非侵襲的分子イメージング法である核医学診断法を応用した「マイクロRI動態イメージング」へ挑戦した。核医学診断法の解像度はmmオーダーが原理的限界であるのに対して、細胞単位の解析に必要な10ミクロンオーダーの解像度をどのように達成するかが挑戦のポイントであった。具体的には、シンチレータによるβ線トラック計測を基本として、(1)超薄膜シンチレータの開発と、(2)シンチレーション光の光学カメラ撮像に挑戦し、システムのコンセプト実証を行った。 試作装置では、150ミクロン厚のCsI(ヨウ化セシウム)シンチレータを用いた。このシンチレータ後部には、直径6ミクロンの光ファイバーアレイが光学接着されており、シンチレーション光はこれを介して出力される。また、イメージングセンサには、蛍光観察等に特化したscientific-CMOS(ORCA-Flash 4.0 V2, 浜松ホトニクス)を採用した。カメラレンズには、明るさの優れたハイスピードイメージングレンズ(1-22130, NAVITOR)を採用し、作動距離や倍率を調整し、且つ感度の向上を図った。 試作装置による実験から、要求される3.5Mbq/ml付近でのイメージングが可能であることがわかった。また、更なる空間分解能や感度の向上に向け、シミュレーションによるシンチレータ仕様の検討を行い、GPSではCsIの2.5倍の応答が期待できるとわかった。
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