研究課題/領域番号 |
16K12887
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
高山 祐三 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 創薬基盤研究部門, 研究員 (60608438)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ヒトiPS細胞 / 自律神経細胞 / 血管 / 微細加工 |
研究実績の概要 |
本研究の目標は交感神経細胞・血管周皮細胞・血管内皮細胞の複合組織により行われる血圧制御等の血管機能を生体外にて再構築したin vitroモデルを構築することである。近年はヒトiPS細胞の利用により様々なヒト細胞種を取り扱うことが可能となり、培養細胞モデルによる疾患メカニズム解析研究は広く用いられはじめている。以上に基づき、当該研究者はヒトiPS細胞より交感神経を誘導し、血管組織細胞と結合することで作製する交感神経-血管モデルシステムを用いた血圧制御とその破綻メカニズムの解析を行うことを目的としている。 初年度では材料となる各種細胞の誘導もしくは確保を優先課題とした。申請書に記載したように、血管内皮細胞に関しては既に広く普及しているHUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)を用いる。更には、血管周皮細胞に関してもまず市販細胞であるHPA-SMC(ヒト肺動脈平滑筋細胞)を用いることが可能かの検討を行った。HPA-SMCを複数回継代した後に、交感神経細胞が放出する神経伝達物質であるノルアドレナリンを人為的に添加した際の細胞活動をカルシウムイメージングを用いて観測を行った。その結果、HPA-SMCはノルアドレナリンに反応してカルシウム応答を示すことを確認し、本研究の目的とする交感神経-血管モデル構築に向けて有用な細胞であることを確認できた。また、当該研究者のオリジナルの技術であるヒト多能性幹細胞からの自律神経細胞誘導技術に関しては、交感神経細胞と副交感神経細胞が混在することが今後の応用に際しての課題であったが、神経分化培養時の条件を最適化することで、交感神経・副交感神経細胞を選択的に誘導する技術開発にも成功している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標である、各種細胞の誘導もしくは確保を行うことができたので、研究進捗はほぼ予定通りである。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度において確保したヒト交感神経細胞、HPA-SMC、HUVECを用いた細胞組織化と共培養を行う。今後の実験で重要となるのは、各種細胞をそれぞれ独立した機能組織として構築、培養した状態で更に相互作用を形成させる構成的な培養技術である。当該研究者らの研究グループでは微細加工技術を用いることで異種神経細胞を組織レベルで相互作用させるための培養技術を有している。この技術を利用することで、交感神経細胞群と血管組織群とを区画化した状態で培養を行い、神経部と血管部でそれぞれ独立した組織形成を行ったうえで相互作用するシステムを構築する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度予算の残額として約4万円が生じたが、予算全体額から考えればほぼ予定通りに執行できたと考えている。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の研究では前年度に引き続き各種細胞の培養、および新規の微細加工実験が始まるためそれぞれの消耗品予算が増大することが予定される。次年度使用額を含め、平成29年度の予算では大部分をこれら実験の消耗品に使用する予定である。
|