研究課題
迷走神経系は、臓器内の生体情報を感知して脳へ送り(求心路)、全身の各臓器の機能を調節する(遠心路)、生体恒常性の柱であるが、計測技術の不備のため、神経の個々の線維や終末の動態は理解されていない。本研究は、胸腹部臓器を支配する迷走神経の臓器内構造や細胞動態について、将来の医療開発に繋がる基盤的理解を得ることを目指す。平成28年度は、研究①「MEMS神経マシンによる迷走神経の線維別電気活動解析」として、胸腹部臓器に分布する遠心性迷走神経を計測し解析した。麻酔下で人工呼吸管理下の動物(ラット)を対象に、頚部迷走神経や臓器近傍の迷走神経に同マシンを装着し、種々の生理的刺激を加えた時の応答から、神経線維の由来臓器を特定すると共に、その神経応答特性を調べた。また、研究②「遺伝学的2光子イメージングによる迷走神経の可視化解析」として、新規開発した全身の遠心性迷走神経終末活動が緑に光るラット(ChAT-Cre::GCaMP6fflox)を利用し、麻酔下の生きた動物において神経活動を2光子顕微イメージングした。また、この生動物2光子イメージングの後、固定標本において免疫組織化学解析を行い、臓器組織内における遠心性迷走神経の3次元配置や構造(神経終末の空間分布等)を調べた。この際、活性の弱い内因性の迷走神経特異的マーカーに代わって、外因性の蛍光タンパク(およびその抗体)を用いることによって、より明瞭な画像や結果を得た。また、胸腹部臓器を従来よりも深部まで観察することを目指して、臓器透明化処理(Olympus等)を試した。この透明化処理の結果、固定標本の免疫組織化学解析の深度が向上し、蛍光標識した神経の臓器内の3次元配置や構造をより深く、高い解像度で観察した。
2: おおむね順調に進展している
難度の高い2光子イメージングについても、諸処の工夫の結果、計画の通りの神経イメージングを実現した。
計画の通りに、進める。
すべて 2016
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J Physiol Sci.
巻: 99 ページ: 999-999
10.1007/s12576-016-0489-5